宮城県では震災の影響でバイオマスの利用量が一時的に減ったが、再び新しいプロジェクトで盛り返してきた。森林資源や生ごみを使って電力を作りながら、農業や漁業と連携した循環型のシステムを構築する。広大な空き地にはメガソーラーが立ち上がり、海では潮流発電の実証にも取り組む。
東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県だが、その後の再生可能エネルギーに対する取り組みは他県を上回るスピードで勢いよく進んでいる。震災から4年が経過した2015年3月の時点で、太陽光からバイオマス、さらに潮流を利用した発電設備が県内各地で相次いで運転を開始した(図1)
その中でもリアス式の海岸で有名な北部の気仙沼市(けせんぬまし)で2014年に稼働した「リアスの森BPP(バイオマスパワープラント)」が注目を集めている(図2)。地域で発生する間伐材を燃料に利用するバイオマス発電設備で、2016年7月から東京都の環境関連施設2カ所に電力を供給することが決まった。
発電能力は800kW(キロワット)あって、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると1600世帯分の電力を供給できる。このバイオマス発電所では燃料に使う木材の調達法がユニークだ。地域内で使える通貨「リネリア」を発行して、間伐材の買取額のうち50%をリネリアで支払う方法を採用している(図3)
リネリアは気仙沼市内の店舗で商品の購入や飲食に使うことができる。発電所が木材を買い取ることによって森林の間伐を推進しながら、その対価で地域の経済を活性化させる。間伐によって森林が健全な状態を保つことができれば、森の豊かな養分が海にもたらされて、林業と漁業の双方が発展していく。木質バイオマス発電を中核にして、地域内で自立可能な循環型の産業構造を作り上げる狙いだ。
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