地域のバイオマスを活用した農林業の新たな取り組みは、気仙沼市の南側に隣接する南三陸町(みなみさんりくちょう)でも始まっている。2015年10月に運転を開始した「南三陸BIO(ビオ)」では、町内の住宅や店舗から排出する生ごみなどを収集して、バイオガスと液体肥料(液肥)を製造することができる(図4)。
南三陸町が廃棄物処理の専門会社であるアミタグループに委託して、町内の廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するプロジェクトだ。南三陸BIOに集めた生ごみなどの廃棄物を発酵させてバイオガスを生成するのと同時に、発酵過程で副産物として生まれる液肥を地域の畑に提供している(図5)。
南三陸BIOの施設内にはバイオガス発電装置も備えていて、年間に22万kWhの電力を供給することが可能だ。一般家庭で60世帯分の電力になり、施設内で自家消費して電力の購入費を削減する。災害時には地域の電力源としても利用できる。発電時の排熱は発酵に必要な加温に使うなど、廃棄物のエネルギーを余すことなく活用している。
南三陸町では2013年に「バイオマス産業都市構想」を策定して、地域のバイオマス資源を生かした新しい町づくりに乗り出した。バイオガス施設と木質ペレット施設を中核に、資源とエネルギーが地域内で循環する仕組みを構築することが狙いだ(図6)。東日本大震災の時に電力・ガス・水道などのライフラインが断たれて、地域の資源を有効に活用できなかった教訓から生まれた構想である。
構想に合わせて液肥の散布試験にも取り組んできた。南三陸BIOの稼働に先だって町内の田んぼや畑に液肥を散布して収穫状況を確認した(図7)。南三陸BIOでは年間に4500トンの液肥を生産する予定で、町内の農地の2割で肥料として利用する計画だ。
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