太陽光発電で2万世帯分の電力、再生可能エネルギー100%を目指す南相馬市に自然エネルギー(1/2 ページ)

福島県の南相馬市で大規模なメガソーラーの建設プロジェクトが動き出した。住友商事が220億円を投入して2018年3月に運転を開始する計画だ。発電能力は県内で最大の60MWになり、年間に2万世帯分の電力を供給できる。発電設備の基礎に「簡易斜杭法」を採用して短工期・低コストを目指す。

» 2016年05月24日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 住友商事が南相馬市に建設するメガソーラーは、太平洋沿岸にある市有地を利用する(図1)。面積は110万平方メートルに及び、東日本大震災に被災した3つの地区に広がる。すでに5月20日に着工して、1年10カ月後の2018年3月に運転を開始する予定だ。

図1 メガソーラーの建設地。出典:住友商事、みずほ銀行、東芝、大成建設

 発電能力は59.9MW(メガワット)に達して、福島県内で稼働中あるいは建設中のメガソーラーを含めても最大になる。太陽光発電の標準的な設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を14%で計算すると、年間に7300万kWh(キロワット時)の電力を供給できる。

 一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算して2万世帯分を上回り、南相馬市の総世帯数(2万3500世帯)の85%程度に相当する電力量になる。住友商事は発電事業の特別目的会社を設立して、発電した電力を固定価格買取制度で売電する計画だ。年間の売電収入は20億円を超える見込みで、総事業費は220億円を想定している。

 このメガソーラーの建設プロジェクトには、みずほ銀行が参画して資金調達を担当するほか、東芝と大成建設がEPC(Engineering, Procurement and Construction、設計・調達・建設)を請け負う。東芝が太陽光発電システムを供給する一方、大成建設は太陽光パネルを設置するための架台の基礎工事などを担当する。

 大成建設は「T-Root」と呼ぶ独自の基礎施工技術を使って、工期の短縮とコストの低減に取り組む。T-Rootは樹木の根(Tree-Root)が地中に広がる形状をヒントに開発した。架台を支える4本の鋼管の下に、それぞれ4本ずつ基礎杭を地中に斜めに打ち込む方式だ(図2)。

図2 太陽光発電設備の架台の基礎を施工する新技術「T-Root」。出典:大成建設

 ハンディー型の電動ハンマーを使って人力で杭を打ちこめるため、一般的なコンクリート基礎による施工と比べて工程が少なくて済む。大成建設によると、施工期間が最大で半分程度に短縮できるうえに、工事費も1〜3割ほど削減できる(図3)。水田の跡地のように軟弱な地質に対応できるほか、重機を使えない傾斜地でも施工しやすい利点がある。

図3 架台の基礎工法の比較(画像をクリックすると拡大)。出典:大成建設
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