鴻海がシャープのエネルギー事業再建を明言、最初の一手は住宅向け蓄電・発電機器(1/3 ページ)

鴻海グループによる買収が決まったシャープ。今後の各事業の動きに注目が集まるが、鴻海グループはシャープのエネルギーソリューション事業を「再建する」と正式に宣言した。シャープは同時に住宅向け太陽光パネルの新製品を発表。業界トップクラスをうたうモジュール効率19.6%の製品だ。再建に向けた第一歩として、住宅向け太陽光市場の開拓を目指す。

» 2016年05月26日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 シャープは2016年5月25日に東京都内で会見を開き、住宅向け太陽光パネル「BLACKSOLAR」シリーズの新製品「NQ-256AF」を発表した(図1)。国内の「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」市場の拡大に伴う住宅用太陽光発電の需要増を見込み、大型化に加えてモジュール変換効率を「業界トップクラス」(同社)の19.6%に改良し、他社製品との差別化を図った。価格は税別14万6400円で、同年8月25日より販売を開始する。

図1 「BLACKSOLAR」シリーズの新製品「NQ-256AF」(クリックで拡大)

 シャープのBLACKSOLARシリーズは独自の高効率化技術を大きな特徴としている。ポイントとなる技術は2つ。1つが電極を裏面に配線する「バックコンタクト(裏面電極技術)」だ。受光できない電極部分をパネル表面から裏面に移すことにより、発電効率を高めている。もう1つは太陽電池セル間をつなぐ銅配線をシート状にすることで面積を増やし、電力損失を減らす配線技術だ。

 同シリーズの新製品であるNQ-256AFは、こうした技術にさらに改良を加えることで、モジュール変換効率を現行製品の19.1%から19.6%に高めた。さらに太陽電池セルの数も従来の42個のから48個に増やして大型化を図ることで、最大出力も256W(ワット)に高めている。

 高効率化に寄与しているのが、銅配線シートの形状改良だ。セル間をつなぐ部分の形状を一部太くすることで、電力損失の低減を図った(図2)。一方、こうした配線構造を持つBLACKSOLARシリーズは、シート基材上に1ミリメートル以下の間隔で配置された銅線とセル裏面の電極を直接接続するため、高い加工精度が求めらる。さらに今回の新製品では大型化を図ったことで、より高い精度が要求される。こうした部分は、生産技術の改良によって対応した。

図2 配線の一部を太くして電力損失を改善(クリックで拡大)出典:シャープ
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