ネガワット取引でデマンドレスポンスが拡大、市場規模は20倍以上に電力供給サービス(1/2 ページ)

需要家が節電した電力を事業者が買い取り、その電力を他の需要家に供給するネガワット取引。節電した電力を売買できるというこの新しい市場の設立に向けて、制度設計が進んでいる。それに伴い注目されているのがインセンティブの付与などと引き換えに、需要家側が電力の使用を抑制する「デマンドレスポンス」だ。調査会社の富士経済は、デマンドレスポンスの関連サービス市場の展望をまとめた。

» 2016年09月09日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 2017年4月に予定されている節電した電力を売買できる「ネガワット取引市場」の創設を目前に、インセンティブの付与などと引き換えに需要家側の電力使用量を抑制する「デマンドレスポンス」(以下、DR)に注目が集まっている。調査会社の富士経済は2016年8月30日、DR関連サービス市場の調査結果を発表した。

 調査ではDRに関連するサービスを、需要家の電力需要を電気料金の設定によって抑制する「電気料金型」、需要家の電力削減分に対しインセンティブを支払うことによって抑制する「インセンティブ型」に区分している。

 さらにインセンティブ型は2つに分類した。1つが調達コスト抑制、インバランス回避、サービスの差別化などを目的に小売電気事業者が契約したDRアグリゲーターや需要家からネガワット(節電量)を買い取る「ネガワット取引サービス」だ。もう1つが送配電事業者が需給バランス調整(供給予備力)や周波数調整(周波数調整力)を目的にネガワットを買い取る「アンシラリーサービス」である。

 2016年時点におけるDRサービス市場全体の規模は、電気料金型のDRサービスが立ち上がることで約2.5億円程度になるとしている。市場成長が進むのは、ネガワット取引市場が設立され、ネガワット取引サービスとアンシラリーサービスの2つが始まる2017年以降だ。より本格的な市場形成は2018年以降と予測している。

 中長期的には太陽光発電など再生可能エネルギーの大量導入による出力変動から系統安定化対策としてDRサービスの需要をけん引する。2020年の送配電部門の法的分離と、それに伴うリアルタイム市場の設立、2022年頃と予想される容量市場の創設などを機に需要拡大が加速し、調査では2030年のDRサービスの市場規模は565億円にまで成長すると見込んでいる(図1)。その際、市場の半数以上を占めるのは電気料金型のDRサービスだ。

図1 DRサービス市場の推移 出典:富士経済
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