新聞より薄い「曲がる」太陽電池、インクジェット印刷で実現太陽光(1/2 ページ)

福島大学らの研究グループは、新聞紙より薄い厚さ53ミクロンの結晶シリコン太陽電池の開発に成功した。インクジェット印刷技術を活用した裏面電極型で、安価かつ曲げられる特性がある。

» 2016年10月11日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

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 福島大学は2016年10月5日、新聞紙より薄い厚さ53ミクロン(0.053ミリメートル)の結晶シリコン太陽電池の開発に成功したと発表した。薄くすることで軽量かつ安価になるだけでなく、建築物や携帯機器、自動車など幅広い対象に適用できるフレキシブルな太陽電池として期待できるという。

図1 開発した太陽電池。出典:福島大学

 現在太陽光発電に最も使われている結晶系のシリコン太陽電池では、通常200ミクロン(0.2ミリメートル)程度の厚さの固いシリコン基板が用いられている。これを薄くすれば、材料の節約によって安く軽くすることができ、さらに数十ミクロン以下の厚さになれば、曲げることができるようになる。

 今回研究グループが開発した太陽電池はこうした薄型であるだけでなく、太陽光の受光面に電気を取り出す電極を配置しない裏面電極型(バックコンタクト)だ。裏面電極型の太陽電池は、光から電力へのパワー変換効率や意匠性が高く、配線が容易という特長があり、開発するメーカーも増えている。

 しかしこの電極の形成には高い精度が求められる。そのため、一般的に半導体の作製と同じフォトリソグラフィという方法が用いられており、装置が高価になる。さらに薄い基板の場合は、作製中に加わる力によって割れてしまうという問題もあり、シリコン基板を厚い支持基板に貼り付け、強化する必要があった。

 これに対し研究グループは家庭用プリンターと同じ原理で、対象物に余計な力を加えないインクジェット印刷技術を用いた製造方法の開発に取り組んだ。これにより厚さ53ミクロンと新聞紙より薄い太陽電池を、支持基板なしの自立した状態で作製することに成功した。

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