地球を取り巻く大気中のCO2濃度、年間に2ppmのペースで上昇が続く法制度・規制

大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度が年々上昇している。人工衛星で観測したデータの分析結果によると、2016年2月に年間の平均濃度が400ppmを超えた。毎年2ppmのペースで上昇を続けている。21世紀中の気温上昇を2度未満に抑えるためには、2100年の時点で450ppm以下が条件になる。

» 2016年10月31日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 環境省とNIES(国立環境研究所)、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の3者が共同で、温室効果ガス観測専用衛星の「いぶき」を使って大気中の二酸化炭素(CO2)の観測を続けている。10月27日に発表した最新の速報によると、地表面から大気の上端までの全大気におけるCO2の年間平均濃度が2016年2月の時点で初めて400ppmを超えた(図1)。

図1 全大気中の二酸化炭素平均濃度の推移。ppm:大気中に含まれる気体の体積の比率(100万分の1で1ppm)。出典:環境省、NIES、JAXA

 2009年の観測当初の年間平均濃度は385ppm程度で、過去7年間に2ppmのペースで上昇し続けている。地球温暖化対策の現在の目標では、21世紀を通じて産業革命以前の水準から気温上昇を2度未満に維持することを掲げている。この目標を達成するためには、2100年の時点でCO2濃度を450ppm以下に抑えることが目安になる。

 かりに毎年2ppmのペースでCO2濃度が上昇すると、2100年には500ppmをはるかに上回って、気温上昇2度未満の目標達成はむずかしい。目安になる450ppm以下に抑えるためには、毎年の上昇幅を平均で0.6ppm程度まで縮小する必要がある。現在の3分の1の水準に相当する。世界各国が長期的な視点に立ってCO2排出量の削減に取り組むことが求められる。

 国内では気象庁が3カ所の観測所で地表近くの大気中のCO2濃度を観測している。その観測結果を見ても、各地で年2ppm前後の水準でCO2濃度が増えている(図2)。日本の地表近くでも地球を取り巻く大気全体でも、CO2濃度の上昇が同様のペースで続いている状況だ。

図2 国内の観測所における二酸化炭素濃度(上)と年増加量(下)。綾里:岩手県大船渡市、南鳥島:東京都小笠原村、与那国島:沖縄県与那国町。出典:気象庁

 CO2濃度の観測に使用する人工衛星の「いぶき」はJAXAが2009年1月に打ち上げた。大気中のCO2の量を計測するセンサーのほかに、測定誤差の原因になる雲やエアロゾル(大気中の小さな粒)を測定するセンサーも搭載して精度を高めている(図3)。パドルと呼ぶ両翼の全面に搭載した太陽電池で電力を供給する仕組みだ。

図3 「いぶき(GOAST)」に搭載するセンサーと太陽電池。出典:JAXA

 2017年度には後継機の打ち上げも予定している(図4)。いぶきが3日ごとに地球の同じ地点に回帰するのに対して、後継機は2倍の6日間かけて回帰しながらCO2を測定できる。搭載するセンサーの測定精度は、いぶきの4ppmに対して後継機では0.5ppmに向上する予定だ。この新しいセンサーには雲がある領域を自動的に避けて観測する「インテリジェントポインティング機能」も搭載して精度を高める。

図4 「いぶき後継機(GOAST-2)」に搭載するセンサー。出典:JAXA

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