連載
» 2016年11月08日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2016年版(29)奈良:バイオマス発電で林業に活力を、山深い村には小水力発電が復活 (1/3)

森林に囲まれた奈良県で木質バイオマス発電所が運転を開始した。林業の活性化を目指して自治体と森林組合が連携して発電事業を支援する。山奥の村では100年以上も前に造った小水力発電所を復活させるプロジェクトが進む。太陽光発電を加えて再生可能エネルギーの地産地消が広がっていく。

[石田雅也,スマートジャパン]

 奈良県のほぼ真ん中に、スギやヒノキの産地として有名な吉野地域がある。林業や製材業が盛んな場所だが、近年は市場の縮小と人口の減少で苦しい状況が続いている。地域の産業の活性化を目指して、豊富にある森林資源のうち製材に利用できない木材を生かしてバイオマス発電が始まった。

 地元の森林組合やリサイクル会社が共同で発電事業会社の「クリーンエナジー奈良」を設立して、県内で初めての木質バイオマス発電所を2015年12月に稼働させた(図1)。発電能力は6.5MW(メガワット)で、年間に4300万kWh(キロワット時)の電力を供給できる。

図1 「クリーンエナジー奈良 吉野発電所」の全景(上)、ボイラー制御室(左下)、蒸気タービン発電機(右下)。出典:よしみね

 発電量は一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1万2000世帯分に相当する。発電所が立地する大淀町(おおよどちょう)の総世帯数(7400世帯)の1.6倍に匹敵する電力になる。発電した電力は固定価格買取制度で売電して、年間に10億円を超える収入を見込める。

 燃料の木質バイオマスは地域で発生する間伐材や製材端材などを年間に7万2000トン使う予定だ。クリーンエナジー奈良の設立と同時に、森林組合が中心になって「奈良県木質バイオマス発電安定供給協議会」を設立した。県内各地の森林組合が参画して、森林に残る用途のない木材を収集してチップ工場に供給する(図2)。

図2 地域の木質バイオマスを発電に利用するまでの流れ。出典:桜井市まちづくり部

 バイオマス発電所の燃料用に販売したチップの売上から、森林の所有者に木材の代金が支払われる仕組みだ。協議会は引取価格の決定や収集量の調整を通じて、燃料の安定供給と森林の保全を図る。さらに固定価格買取制度で求められるバイオマス資源のトレーサビリティ(由来証明)の管理業務も代行する。

 こうした一連の仕組みを整備したことで、木材の有効利用が進んで林業の活性化につながっていく。木質バイオマス発電所が稼働して新たな雇用も生まれた。奈良県では吉野地域を中心に、中部から南部まで森林が広がっている。木質バイオマス発電に燃料を供給する事業を通じて、県内の林業にもたらされる経済の波及効果は大きい(図3)。

図3 奈良県の市町村。出典:奈良県庁
       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.