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» 2016年11月21日 13時00分 UPDATE

法制度・規制:2040年のエネルギー、日本はどうなる (1/3)

2040年のエネルギー動向をIEA(国際エネルギー機関)が予測した。前提となるのは2016年11月4日に発効したばかりのパリ協定だ。IEAが同11月16日に公開した「World Energy Outlook 2016」には、「石炭の時代」から、「天然ガス・風力・太陽光の時代」への転換が描かれている。だが、日本の政策目標はIEAの描く明るい未来からずれている。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 10年後に振り返ったとき、2016年はエネルギーの転換が起こった年として記憶されているかもしれない。石炭の価値が次第になくなり、天然ガスへの転換が起こった年、再生可能エネルギーの倍増が始まった年として。

 違う未来も想像できる。温暖化対策の合意がうやむやになり、気温上昇を食い止められなかった年。石油不足の原因となった年として*1)

  IEA(国際エネルギー機関)が2016年11月16日に公開した「World Energy Outlook 2016(WEO 2016)」にはどちらの未来も描かれている。IEAはこれまで化石燃料や原子力を重視する予測を公開してきた。世界の一次エネルギーの9割以上を化石燃料が担っている現状があるため、さほど不自然な態度ではない。

 だが、WEO 2016では、再生可能エネルギーが今後数十年の間に非常な進歩を遂げると主張。主に途上国の成長によって必要となる2040年までのエネルギー需要を、再生可能エネルギーと天然ガスが満たすと予測した*2)

*1) 石油価格が低水準で推移するなか、石油資源に対する投資が、現在の石油生産を維持する水準以下になっているとWEO 2016は指摘している。
*2) パイプライン設置が必要な従来のガス供給量を、既に船舶輸送でまかなうことが可能なLNG(液化天然ガス)が上回っており、この傾向がさらに強くなると指摘している。船舶の方が市場の需給構造の変化に対応しやすい。

天然ガスと再生可能エネルギーへ

 WEO 2016は世界のエネルギー動向について複数のシナリオを検討、それぞれについて2040年の姿を描き出している。

 中庸ともいえるシナリオの内容はこうだ(図1)*3)。エネルギー需要自体は、2040年までに30%増加する。

*3) 同シナリオを実現するためには累計44兆ドルの投資が必要だとした。石炭・石油・天然ガスにこのうち60%を振り分け、再生可能エネルギーの割り当ては20%である。化石燃料の比率が高いのは燃料代を含むからだ。なお、今後必要となるエネルギー効率改善はこの44兆ドルに含まれておらず、さらに23兆ドルが必要だという。

図1 2040年のエネルギー予測 5つの主な変化を示した 出典:IEA

 この図では再生可能エネルギーと電気自動車、天然ガス、二酸化炭素排出量、石油消費量の変化を描いている。

  • 発電量に占める再生可能エネルギーの比率は、現在の23%から37%へと増加
  • 電気自動車の台数は、現在の130万台から、115倍の1億5000万台に成長
  • 天然ガス需要は現在から50%成長し、石炭の需要を超える*4)
  • 発電に由来する二酸化炭素排出量は年平均0.5%の増加にとどまる
  • 石油消費量は現在の1日9250万バレルから、1億35万バレルに増加

 この結論はかなり印象的だ。電気自動車が現在の日本の国内自動車保有台数を上回り、二酸化炭素排出量の大きな石炭が排出量の少ない天然ガスに置き換わる。二酸化炭素排出量の増加はほぼ抑制できる。

 石油消費量を減らすことが難しいのはなぜだろうか。発電用の石油需要ではなく、トラック輸送や航空機、石油化学などへの需要だとIEAは説明している。乗用車の台数は次の25年で倍増するものの、バイオ燃料*5)や電気自動車の普及によって乗用車に由来する石油需要は減少すると予測した。

*4) 石炭の大需要国である中国が3つの理由によって需要を減らすため、石炭需要は今後25年間で横ばいになると予測した。3つの理由とは、大気汚染防止、燃料源多様化政策、石炭を大量に消費する製鉄・セメント製造の比率低下である。例えば石炭火力の比率は現在の約4分の3から、2040年には45%以下に低下すると予測した。
*5) IEAによれば、輸送用燃料に対するラテンアメリカ諸国の需要は、過去20年間で2倍以上に増加している。原因は自動車だ。地域需要の90%を占めるブラジルではガソリンとエタノールの混合物であるガソホールの他、水和エタノールも利用できるフレキシブル燃料車(flex-fuel car)が普及しており、燃料のうち7%を液体バイオ燃料が占めている。なお、同地域が生産するバイオ燃料は2001年から2013年の間に倍増。全世界に占める現在のバイオ燃料のシェアは27%。

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