電力会社が開発したシステムに、またも重大な不具合が発覚した。中部電力はエリア内の需要と発電量をもとに算定するインバランスのデータに誤りがあったことを公表した。この問題によって、全国の電力会社が発電事業者や小売電気事業者から徴収するインバランス料金を不正確に計算していた。
中部電力は2016年4月の小売全面自由化に伴って運用を開始した「エリアインバランス算定システム」に不具合が発生していることを12月20日に経済産業省に報告していた(図1)。2日後の12月22日には同省から報告徴収を求められ、年明けの1月4日になって不具合の概要を公表した。
問題が発生したシステムは、電力会社の送配電部門がエリア内の需要と発電量の実績値をもとに、各事業者が事前に提出した計画値との差(インバランス)を計算する。2016年4月に始まった電力の小売全面自由化に伴って、さまざまな制度の変更があった。そのうちの1つが各事業者に課せられる需要と供給を一致させる義務だ。
従来は発電事業者と小売電気事業者が実際の発電量(供給量)と需要を常に一致させる「実同時同量」を義務づけていた。小売全面自由化後は1時間前の計画値で一致させる方法に変わった。これを「計画値同時同量制度」と呼んでいる(図2)。
実績値と計画値にインバランスが発生した分は電力会社の送配電部門が調整する仕組みだ。実際の電力が足りない場合には「不足インバランス」の状態になり、事業者は不足分を調整してもらう代わりに電力会社に対してインバランス料金を支払う必要がある。逆に電力が余った場合には「余剰インバランス」として電力会社が事業者に料金を支払う。
このインバランス料金は全国10エリアの30分単位の需給状況を参考に決める。エリアごとに需要と発電量から「エリアインバランス」を算定する。その集計結果をもとに日本卸電力取引所が市場価格に基づいてインバランス料金の単価を設定する流れだ(図3)。ところが中部電力がエリアインバランスの算定を誤ったために、全国の電力会社は不正確な単価のまま事業者に対してインバランス料金の精算を実施してしまった。
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