家庭向けのシェア2.7%、新電力300社以上が自由化6カ月目に動き出す電力システム改革(78)(1/2 ページ)

電力の小売全面自由化から6カ月後の競争状況を国の委員会が検証した。新電力の数は300社を超える一方、家庭向けの販売シェアは2.7%にとどまっている。東京・関西・北海道でシェアが高く、その他の地域は低い。地方では自治体が出資する事業者が増えて、シェアの上昇に期待がかかる。

» 2017年01月27日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第77回:「ベースロード電源市場を2019年度に新設、水力・原子力・石炭火力を売買」

 経済産業大臣に直属する電力・ガス取引監視等委員会が、電力市場における競争状況の評価をまとめた。競争の進展を示す新電力(小売電気事業者)の市場シェアは、全面自由化から6カ月が経過した2016年9月の時点で7.7%だった(図1)。

図1 小売市場シェア(2016年9月)。新電力:小売電気事業者、みなし小売:電力会社10社。出典:電力・ガス取引監視等委員会

 家庭向けに販売する低圧電灯(契約電力50キロワット未満)のシェアは2.7%で比率は小さいものの、今のところ競争状況は判断しにくい。このペースで伸びていくと、1年目のシェアは5%程度になる見通しだ。すでに自由化から16年目に入った企業向けの特別高圧(2000キロワット以上)のシェアは5.3%にとどまる一方、11年目の高圧(50〜2000キロワット)は9.3%まで伸びた(図2)。

図2 自由化後の小売電気事業者のシェアの推移。出典:電力・ガス取引監視等委員会

 特に注目すべきは、特別高圧・高圧ともに直近の1年間で新電力のシェアが急上昇している点だ。家庭向けの小売自由化に伴って新電力が一気に増えて、市場の流動性が高まったことによる。今後も家庭向けと合わせて企業向けでも新電力のシェアが伸びていく可能性は大きい。

 ヨーロッパの先進国の状況を見ると、全面自由化から20年近くを経過したイギリスでは、自由化の1年目で新電力のシェアは10%を超えていた(図3)。8年目には50%近い水準まで上昇している。一方でフランスは8年目の2015年にようやく10%に達した。もともと電気料金の水準が他の国よりも低く、利用者が既存の電力会社から切り替える必然性が小さいためだ。

図3 イギリスとフランスの全面自由化後の新電力による低圧のシェア(画像をクリックすると拡大)。出典:電力・ガス取引監視等委員会

 日本では欧米の先進国と比べて電気料金の水準が高いことから、フランスのような状況になる可能性は小さいとみてよい。とはいえ現状では料金とサービスの両面で新電力の魅力が大きいとは言いがたく、契約を変更する利用者が広がりにくいのも事実だ。

 その点で大きなきっかけになるのは、2017年4月に実施する都市ガスの小売全面自由化である。電力とガスを組み合わせたセット割引が拡大すれば、利用者から見た料金面のメリットは高まる。ただし電力会社がガスの自由化に合わせて価格競争に乗り出すと、新電力から電力会社に契約を戻す利用者も数多く出てくる。

 現状では地域によって新電力のシェアに大きな差がある。新電力のシェアが最も高い東京電力の管内では3.8%まで上昇している(図4)。次いで関西が3.0%、北海道が2.2%で続く。これに対して1%未満にとどまっているのが、東北、北陸、中国、四国、沖縄の5地域だ。沖縄を除くと、いずれも電気料金の水準が低い地域である。

図4 地域別の低圧電灯のシェアの内訳(2016年9月、販売電力量ベース)。出典:電力・ガス取引監視等委員会
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