ノルウェーが電気自動車で快挙、シェア4割へ電気自動車(1/3 ページ)

ノルウェーで電気自動車の記録が生まれた。2017年1月、新車販売台数におけるディーゼル車とガソリン車の合計シェアが5割を切った。ノルウェーは今後も電気自動車の比率を高め、2025年にはゼロエミッション車100%を目指す。

» 2017年02月22日 09時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 エネルギー問題を解決するには、自動車をはじめとする輸送機関の変革が必要だ。この分野で先頭を走っている国はどこだろうか。北欧のノルウェーだ。

 同国内で2017年1月に販売された乗用車の記録をノルウェーの調査会社OFVが発表*1)。新車のうち、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンのみを備えた自動車の比率は48.6%となり、初めて5割を切った。このような記録を達成した国は、ノルウェーだけである。

 伸びているのはプラグインハイブリッド車(PHEV)と、純粋な電気自動車(EV)だ。PHEVのシェアは20.0%、EVのシェアは17.5%、合計すると37.5%に達した*2)

 EVの台数は順調に増えている。2016年12月13日には、ノルウェー電気自動車所有者協会(Norsk elbilforening)がマイルストーンとなる記録を発表。国内のEVの保有台数が10万台を超え、これによって、毎年20万トンの二酸化炭素排出量削減に貢献したという(図1)。次の目標は2020年の40万台だとした。

 力を入れているのは民間だけではない。ノルウェー議会は2025年までに排気ガスを排出しないゼロエミッション車の比率を100%に高める目標を策定している。

*1) OFVによれば2017年1月の乗用車の国内総販売台数は1万3055台。メーカー別のシェア上位5社はドイツVolkswagen(12.9%)、ドイツBMW(11.8%)、トヨタ自動車(11.7%)、スウェーデンVolvo(8.9%)、ドイツMercedes-Benz(7.4%)。VolkswagenではEVの「e-Golf」とPHEVの「Golf GTE」の販売シェアが高い。なお、LEAFを販売する日産自動車のシェアは4.7%だった。
*2) ディーゼル車とガソリン車、PHEV、EV以外に充電用コネクタを備えていない従来のハイブリッド車がある。

図1 10万台を祝う記念会場の様子 ノルウェー国内のEVの4台に1台が日産自動車のLEAFだという 出典:Norsk elbilforening

エネルギー問題が「存在しない」ノルウェー

 ノルウェーにはエネルギー問題が存在しない。エネルギー問題に苦しむ日本から見るとこのように見える。

 ノルウェーは日本とほぼ同じ広さ(38万6000平方キロメートル)の国土に、北海道とほぼ同じ527万人が暮らす。海面下の深さが1000メートルに達する深い谷「フィヨルド」(図A-1)や輸出量世界第2位の漁業国というイメージが強いものの、エネルギーにも恵まれている。

図A-1 ノルウェー最大のソグネフィヨルド 出典:jacq氏(pixabay)

 原子力発電や石炭火力発電とは無縁だ。電力の96%を水力発電でまかなう。残りはガス火力発電(1.8%)と風力発電(1.6%)。

 巨大な揚水発電所を複数備え、デンマークやドイツで余った自然エネルギー由来の電力を輸入し、他国で不足したときに輸出している。いわば国内に超大型蓄電池が備わっているかのようだ。2014年の国内発電量は、IEA(国際エネルギー機関)によれば1423億キロワット時(kWh)、輸出電力は219億kWh、輸入電力量は63億kWh。

 さらに化石燃料にも恵まれている。1971年に国土の南西に広がる北海で海底油田が発見された後、1975年には原油の輸出を始めた。石油産出量のシェアは2014年時点で2.0%。天然ガスはさらに優位にある。生産シェアは世界第7位の3.3%だ。石油とガスの事業収入を年金の資金として国が積み立てている。

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