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» 2017年02月23日 15時00分 UPDATE

蓄電・発電機器:最長の寿命、大容量化できる有機物蓄電池 (1/4)

米ハーバード大学の研究チームが再生可能エネルギーに由来する電力を蓄える用途に適する蓄電池を開発した。長寿命、大容量、低コストという3つの特徴を備える。有機物に電荷を蓄えるレドックスフロー電池で実現した。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 電力源に占める再生可能エネルギーの割合が50%を超え、さらに高まっていったとき何が起こるか。国際間の電力融通や需要側を制御するデマンドレスポンスが一般化する。同時に、膨大な電力をいったん蓄え、数時間後に放出する蓄電池の普及が進むだろう。

 このような蓄電池には3つ条件がある。システムコストが低いこと、10年単位の寿命があること、大容量を容易に実現できることだ*1)。この3つを兼ね備えたリチウムイオン蓄電池の開発は困難だ。

 そこで、米エネルギー省(DOE:Department of Energy)は、3つの条件を満たす蓄電池を開発するための資金を提供。例えば、1キロワット時当たり100ドル未満という目標を示している。

 これに応えたのが、米ハーバード大学の研究チームだ。2017年2月9日にこれまで発表された大容量に向く蓄電池のうち、最も寿命が長い電池を開発したと発表した*2)

 研究チームが開発した電池の性能は高い。充放電を1000回(サイクル)繰り返した場合でも、初期容量の99%を維持できた(図1)。

 図1からは、充放電1回当たりの容量維持率(Capacity retention)が、99.9989%であることが分かる。500サイクル後も初期容量の99.5%を維持できた*3)

*1)2017年2月7日には、米化学会の学会誌であるACS Energy Lettersに「A Neutral pH Aqueous Organic/Organometallic Redox Flow Battery with Extremely High Capacity Retention」(DOI:10.1021/acsenergylett.7b00019)が掲載された。
*2) 移動体用の蓄電池とは異なり、小型化や軽量化の優先順位は低い。
*3) 研究チームが開発した蓄電池では、電荷を蓄える分子の種類によって化学的安定性と、電気化学的安定性が異なる。前者の性能は1日当たりの容量維持率で、後者の性能は充放電1サイクル当たりの容量維持率で分かる。

図1 寿命の長い蓄電池が実現した 横軸は充放電回数、右縦軸は電池の容量 出典:米ハーバード大学(ACE Energy Lettersに投稿した図版、掲載許可済み)

 DOEのEnergy Storage Research at the Office of Electricityでディレクターを務めるImre Gyuk氏は発表資料の中で次のように述べている。「今回の研究は、サイクル寿命を大幅に改善し、コストを大幅削減した将来の電池を目指す上で重要な意味を持つ。効率的で寿命の長いレドックスフロー電池は、電力網のインフラストラクチャの一部として標準となると期待している」。

3つの特徴を実現

 研究チームが開発した電池は、レドックスフロー電池に分類される。レドックスフロー電池の一般的な利点はこうだ。

  1. タンクに蓄えた溶液中の分子(イオン)が電荷を担うため、タンクの容量を増やすだけで蓄電池の容量が増加する
  2. 低コスト
  3. サイクル寿命が長い

 それぞれの利点をリチウムイオン蓄電池と比較してみよう。リチウムイオン蓄電池で容量を増やそうとすると、電池セル自体を増やす必要がある。多くのリチウムイオン蓄電池はグラファイト負極とリチウム金属酸化物正極を電池セルに内蔵する。このため、容量を増やそうとすると、高価な固体の電極(の面積)を増やす必要がある。容量だけを増やすことができず、コスト高になる。

 リチウムイオン蓄電池のサイクル寿命は金属酸化物正極などに依存する。正極材料の結晶構造を壊さないように充放電しなければならないため、蓄電池を「フル充電」できず、使い切ることもできない。 リチウムイオン蓄電池を製品化する場合、電池の寿命が短くならないよう、充電率(SoC)を制御する部品が組み込まれている。このような工夫を凝らしても数千回を超えるサイクル寿命は実現が困難だ。

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