純度99.999%の水素をアンモニアから、低コストな新製造方式を確立蓄電・発電機器(1/2 ページ)

岐阜大学と澤藤電機はアンモニアから高純度の水素を製造できるシステムを開発した。プラズマを利用して製造するのが特徴で、貴金属を利用する必要がなく、低コストな水素製造が可能だという。水素エネルギーの普及課題の1つが「貯留や輸送の低コスト化」だ。この課題の解決策として注目されている「アンモニアの水素キャリアとしての利用」を実現するシステムとして、期待が掛かる。

» 2017年04月03日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 水素のエネルギー利用を普及させるための課題の1つに、貯留や輸送の簡易化がある。水素は体積あたりの重量が小さい。そのため、貯留や輸送を行いやすくするためには、700気圧程度で圧縮する、もしくは−252.9度に冷却して液体にする必要がある。これにはコストがかかるため、常温常圧に近い条件で貯留・運搬できるようにする水素キャリア技術の開発が期待されている。

 水素キャリアの1つとして注目されているのが、アンモニア(NH3)の利用だ。1分子中に多くの水素を含み、20度、8.6気圧で液化するため、水素より扱いやすい。この特性を利用して、アンモニアを貯留・輸送し、必要な場所で水素を取り出して利用できるようするという考え方である。このコンセプトを実現する上で求められるのが、アンモニアから高効率に水素を取り出せる、低コストな製造装置だ。

 岐阜大学 次世代エネルギー研究センター長の神原信志教授は澤藤電機と共同で、アンモニアを原料とする水素製造装置の開発に成功した。高い純度の水素を製造でき、設備も低コストだという。

高価な触媒が不要の「プラズマ方式」

 従来、アンモニアの分解に用いられてきた触媒反応法は、400〜800度の高温にする必要があった。触媒にはルテニウムなどの高価な貴金属を必要とするため、環境負荷とコストが高い。さらに未反応のアンモニアが残留することもあり、劣化につながるため燃料電池には使用しにくいという課題があった。

 そこで、神原教授は大気圧プラズマを利用して、常温・無触媒でアンモニアから水素を製造する「常温無触媒水素製造法」開発した。これは石英ガラス製の二重筒構造の装置で、外筒に接地電極を巻きつけ、内筒に高電圧電極を差し込んでいる。この中の2〜5mmの隙間にアンモニアガスを流し、一定の波形の電圧を加えて水素と窒素を発生させるという仕組みだ。

 ただ、触媒反応法と同じく、未反応のアンモニアが残留するという課題が残った。そこで澤藤電機と協力し、残留アンモニアを混入させず水素だけを取り出す「プラズマメンブレンリアクター」という装置を新開発した。水素分離膜を溶接した高電圧電極を導入することで、残留アンモニアの混入を防いでいる。

プラズマメンブレンリアクターの外観(写真左)。右の写真は動作時の様子(クリックで拡大) 出典:岐阜大学
プラズマメンブレンリアクターの概念図(クリックで拡大) 出典:岐阜大学
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