未利用バイオマスを安定した固体燃料に変換、IHI実証へ自然エネルギー

IHIはパーム由来の未利用バイオマスを原料とした、カーボンニュートラルのバイオマス燃料製造に関する商用実証に取り組むことを発表した。サンプル出荷を2017年度後半に開始する予定だ。

» 2017年05月01日 11時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

テストプラントを商用実証水準に拡張へ

 IHIは東南アジア地域に多く存在するパーム由来の未利用バイオマスを原料とした、火力発電に適用可能なカーボンニュートラルのバイオマス燃料製造に関する商用実証に取り組むことを決定した。マレーシアで稼働中のテストプラントを商用実証水準に拡張する計画であり、燃料サンプルの出荷を2017年度後半に開始する予定だ。

 燃料の供給安定性や優れた経済性、長年の運用実績による高い信頼性により、石炭火力発電は今後も国内の重要なベースロード電源としての役割を期待されている。この石炭の代替燃料としてカーボンニュートラル(ある生産や活動を行う際に、CO2の排出される量と吸収される量が同じである状態のこと)であるバイオマスを活用した、環境負荷低減の実現を目指すさまざまな取組みが国内外で注目されている。

 しかし、マレーシアとインドネシアで広く生産されているパーム油の搾油過程で大量に発生するEFB(Empty Fruit Bunch/パームヤシの空果房)は腐敗しやすく、水分や灰分、塩分も多いため、その大部分は未利用なままで廃棄されているのが現状だ。

パーム油産業の概要 出典:IHI

 IHIは未利用のバイオマス資源であるEFBの有効利用を促進するため、ボイラメーカーとしての知識や技術をベースに、微粉炭焚石炭火力発電所やCFBC(Circulating Fluidized Bed Combustion、循環型常圧流動層)ボイラで使用可能なレベルまで改質し、安定した品質のカーボンニュートラルな固体バイオマス燃料(EFBペレット)に変換する手法を確立した。現在マレーシア国内でEFBペレットを製造するテストプラントを稼働させており、2017年度後半頃からのサンプル出荷を予定している。

 IHIは石炭火力発電所での木質バイオマス高比率混焼や、発電設備の高効率化、CO2回収技術の開発などに加え、カーボンニュートラルなバイオマス燃料を提供する今回の取組みを通じて、火力発電設備から排出されるCO2低減に貢献していく方針だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.