透明で曲げられる太陽電池、東北大学が開発太陽光

東北大学の研究グループは、透明なシート材料を利用した柔軟性のある太陽電池を開発。透明な二次元シート材料を用いる太陽電池では「世界最高」という、0.7%の発電効率を達成した。

» 2017年10月02日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 東北大学の研究グループは2017年9月、透明で柔軟性を持つ太陽電池の開発に成功したと発表した。原子オーダーの厚みを持つシート材料の「遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)」を利用したもので、発電効率は0.7%。透明な二次元シート材料を使った太陽電池では、世界最高の発電効率だという。

開発した太陽電池 出典:東北大学

 曲面など、一般的なシリコン太陽電池では設置が難しい場所に導入できるとして、柔軟性のある薄型太陽電池の研究開発が活発に行われている。今回研究グループが利用したTMDは、1層当たりの光透過率が90%と、高い透明性が特徴の半導体材料だ。しかし、TMDを利用した透明な太陽電池を、大面積基板に作る技術はこれまで開発されていなかった。

 このTMDを利用した太陽電池の開発に向けて、研究グループは「ショットキー型太陽電池」に注目。これは電極とTMDとの間に自発的に形成される、ショットキーと呼ばれる電位構造を利用して発電を行う太陽電池。電極の種類と形状を最適化するだけで発電が行えるという、シンプルな構造が特徴となっている。

 ショットキー型太陽電池を透明なTMDに対して用いた前例はなかった。そこで研究グループは、まずショットキー形成に最適な電極種の選定を行った。一般的には同じ種類の金属をTMDの両端に配置するデバイスが一般的だが、今回は異なる種類の電極を配置する異種金属電極構造を用いた。両端電極対の組み合わせを変えて特性を評価したところ、両端電極の仕事関数差が大きくなるほど、発電効率は向上することが分かった。

 電極の間隔とTMDの配置方法についても検討し、電極間隔が2μm以下で、TMDを基板に接触させない架橋型とすれば、最大0.7%(AM1.5G照射)の発電効率になることが分かった。この数値は3層以下の厚みを持つTMD太陽電池としては、世界最高レベルの発電効率という。

 研究グループはデバイスの大面積化にも取り組んだ。現在半導体デバイス製造プロセスで一般的に用いられているリソグラフィ装置で電極を基板に作製し、TMDを塗布するだけで太陽電池が成形できるという。そこで、シリコン基板にあらかじめパターンニングした電極にTMDを塗布して太陽電池を作製したところ、cm単位の基板上でも容易に発電が確認できたとしている。透明フレキシブルなポリマー(PEN)基板上においても、同様の手法で作製できた。

 今回の成果について研究グループは、透明かつフレキシブルな大面積基板上に太陽電池の作製が可能であることを実証したことで、TMDを用いた透明フレキシブル太陽電池の実用化に大きな貢献が期待できるとしている。

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