理研、JST、東京大学らの研究グループが洗濯可能な薄型の有機太陽電池を開発。逆型構造の太陽電池と、高い安定性およびエネルギー変換効率を持つ半導体ポリマーを組み合わせることで実現した。
衣服に貼り付け、しかも洗濯できる――。こうしたユニークな太陽電池が登場した。理化学研究所(理研)、科学技術振興機構(JST)、東京大学らの共同研究グループは、洗濯も可能な伸縮性と耐水性を持つ、超薄型有機太陽電池の開発に成功したと発表。ウェアラブルデバイスや、新しい機能を備えたテキスタイル向けの安定電源として期待できるという。
共同研究チームは、2012年に理研の創発分子機能研究グループが開発した新しい半導体ポリマーである「PNTz4T」を用い、逆型構造の有機太陽電池を厚さ約1μm(マイクロメートル)の高分子材料であるパリレン基板上に作製。この超薄型有機太陽電池は、ガラス支持基板から剥離した状態で、出力100mW/cm2の擬似太陽光照射時において、短絡電流密度(JSC)16.2mA/cm2、解放電圧(VOC)0.71V、フィルファクター69%、エネルギー変換効率7.9%を達成した。
これまでに報告された柔軟性の高い有機太陽電池の効率が4.2%であることと比較すると、2倍近い効率の改善になるという。さらにこのデバイスは、約50%までつぶしても安定的に駆動し、非常に高い機械的柔軟性を持つことも確認した。
作製した超薄型有機太陽電池は、5分間水中に浸した後であっても、ほとんどエネルギー変換効率が低下しないなど、高い耐水性を持つことも分かった。加えて、黒色の水性ペンでデバイス表面に染みを付けた場合でも、デバイスを洗剤液中に漬けたり、かき混ぜたりすることでデバイス表面の汚れを取り除けば、素子性能の低下を引き起こすことなくエネルギー変換効率を初期値に戻すことができたという。
さらに、あらかじめ引張させた2枚のゴムで厚さ3μmの超薄型有機太陽電池を双方向から挟むことで、伸縮性と耐水性を両立させる封止技術を開発した。ゴム封止していないデバイスでは120分間の水に浸すとエネルギー変換効率が初期値から約20%低下したのに対し、ゴム封止を行ったデバイスでは同5%の低下に留まった。加えて、水滴を乗せた状態で約50%の伸縮を繰り返しても、エネルギー変換効率は初期値の80%を維持できたとしている。
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