海の酸性化は予想より早く進行、気象庁が情報提供へ自然エネルギー(1/2 ページ)

気象庁は、地球全体の海洋酸性化情報を毎年定期的に提供すると発表した。また、海洋酸性化が地球全体で、従来予想よりも早く進行していることを確認した。

» 2017年12月01日 09時00分 公開
[松本貴志スマートジャパン]

海洋酸性化が地球規模で進行していることを確認

 気象庁は2017年11月、地球全体の海洋の酸性化は従来予想より早く進行しているという調査結果を発表した。今後、海洋酸性化に関する情報の定期提供も開始する。地球全体の海洋酸性化情報の定期更新は世界初になるという。

左:1990年時点の海洋pH分布 右:2016年時点の海洋pH分布(クリックで拡大) 出典:気象庁

 地球全体の平均海洋pHは、1990年時点以降で約0.05(10年当たり約0.018)低下した。この低下速度は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書で報告されている「産業革命以降約250年間で0.1低下」(10年当たり約0.004)したペースよりも速いと気象庁は指摘する。

 海域ごとの平均pH低下速度は、太平洋で10年当たり0.017、大西洋で10年当たり0.017、インド洋では10年当たり0.020となっており、海洋酸性化は地球全体で進行する現象であることが今回の解析により再確認された。下図の太線は平均値、塗りつぶしは標準偏差、黒線は長期変化傾向を示す。

各海域における表面海水中のpH長期変化(クリックで拡大) 出典:気象庁

 海水表面のpHは、7.9〜8.2程度の弱アルカリ性を示す。人間活動によって排出された二酸化炭素の約半分は、海洋に吸収されたと考えられており、海中に溶けた二酸化炭素は水素イオンと炭酸水素イオンに電離するため、pHが低下する。よって海洋酸性化の進行は、海洋が持つ二酸化炭素吸収能力の低下につながるため、地球温暖化が加速することが懸念されている。

 また、海中の水素イオン増加は炭酸イオン減少を招くため、海中生物の骨格や殻などの成分である炭酸カルシウムの生成量を減少させる。よって海洋酸性化は、サンゴ礁の発達阻害やプランクトン、ウニなどの貝、甲殻類といった生物の成長を妨げることにもつながる。

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