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» 2017年12月13日 07時00分 公開

自然エネルギー:ごみを“都市油田”に変える新技術、微生物で実現

積水化学工業がごみをまるごとエタノールに変換する生産技術の開発に成功。微生物触媒を活用した技術で、ごみを“都市油田”に替える技術として普及を目指す方針だ。

[長町基,スマートジャパン]

 積水化学工業と米LanzaTech社はこのほど、ごみをまるごとエタノールに変換する生産技術の開発に成功したと発表した。ごみ処理施設に収集されたごみを一切分別することなくガス化し、このガスを熱・圧力を用いることなく微生物により、エタノールに変換することで、既存プロセスに比べ十分に競争力のあるコストでの生産を実現したという。

 日本で排出される可燃性ごみは、実に年間約6000万トンといわれており、そのエネルギー量はカロリー換算で約200兆kcal(キロカロリー)に達するという。これは日本でプラスチック素材を生産するのに用いられる化石資源(年間約3000万トン、約150兆kcal)に比べても、十分に大きな量となっている。しかし、その再利用は一部にとどまっており、多くは焼却・埋立処分されているのが現状だ。雑多かつ不均質であり、含まれる成分や組成の変動が大きいという、ごみの工業原料としての扱いにくさが、再利用の障壁となっている。

 積水化学工業は、埼玉県寄居町にごみ処理施設を有するオリックス資源循環(東京都港区)の協力を得て、その構内にパイロットプラントを建設、2014年から3年間の開発を経て、実際に収集したごみをエタノール化することに成功。年間の生産能力は20kl(キロリットル)で、品質およびコスト面でも十分に競争力のあるエタノールが生産できたとしている。

実証の概要 出典:積水化学工業

 両社は今回、ごみの扱いの難しさを解決するために、各要素技術を採用・開発し、同技術を具現化した。そのプロセスと工夫内容は主に以下の3つだという。

  1. 雑多なごみを化学的組成が単一の原料に変換する技術として「ガス化」を採用
  2. 「微生物触媒」によるエタノールの生産と、それを具現化するための「ガス精製技術」の確立
  3. ごみ中の成分変動にアジャストしてエタノールを生産する「培養コントロール技術」の確立

 ガス化は低酸素状態でごみを分子レベル(CO、H2)にまで分解する方法であり、既に確立された技術である。ごみが有する豊富なエネルギーを損なうことなく、特性を均質化することができる。微生物触媒は熱・圧力を用いることなく、目的とする物質を生産することができる先進的な触媒技術だ。LanzaTech社が保有する微生物は、原生微生物の10倍以上もの反応速度を有し、工業レベルに十分な生産速度を発現できることが特徴となっている。しかし、ごみから得られたガスは、多くの夾雑(きょうざつ)物質(あるものの中にまじっている余計なも)を含んでおり、そのままでは微生物触媒に用いることはできない。そこでガスに含まれる約400種の夾雑物質(約400種)の特定と精製、夾雑物質の状態をリアルタイムでモニタリングしながらプロセスを効率的に駆動する制御技術、を開発し、微生物触媒の利用を可能にした。これが最大のブレークスルーポイントとなっているという。

 さらに、ごみに含まれる成分や組成が大きく変動することが、ごみの工業利用が不可能とされてきた大きな要因だが、これを克服するために組成変動に応じて微生物の生育状態を調整し、活性を一定に維持する技術、さらにごみ処理施設特有のあらゆるリスクに対応できる技術を確立した。

開発した技術のポイント 出典:積水化学工業

 同技術で生産するエタノールは、石油化学製品の6割程度を占めるエチレンと同様の構造である「C2構造」を持つ点も特徴だ。既存の化学プロセスの活用で、エタノールをエチレンモノマーやブタジエンモノマーに変換することで、身近なプラスチックなどの有機化学素材に誘導することができる。これにより、ごみの再利用による化石資源の代替だけでなく、サステナブルな社会の構築のほか、全国各地での新たな産業創出(地方活性化)や、炭素の固定化効果によるCO2排出量の削減に貢献できるとする。

 積水化学工業は、ごみからエタノールを生産する同技術は、ごみを“都市油田”に替える技術ともいえるとし、同技術の普及を図ることで、ごみからプラスチックなどの生産ができるようになることによる「化石資源に依らない究極の資源循環社会システムの創生」が期待されるとしている。

 同社は、技術の普及に向けて、国をはじめとするステークホルダーに広く説明を行うとともに、各自治体やごみ処理関連企業等のパートナー候補を幅広く募り、事業化を目指す。2019年度の実用プラント稼働を目指し、以降、各地にあるごみ処理施設の設備更新のタイミングで、同技術の導入を目指す方針だ。

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