知らないと損する太陽光発電の「リパワリング」、なぜ海外では重要視されるのか太陽光(1/3 ページ)

太陽光発電で先行するドイツなどの欧州で重要視されている発電所の「リパワリング」。そもそもリパワリングとは何か、欧州で重要視される背景にはどういった理由があるのだろうか?

» 2018年02月21日 07時00分 公開

太陽光発電所の“リパワリング”とは?

 2017年4月に改正FIT法が施行され、発電所のO&M(オペレーション&メンテナンス)が必須になったことから、O&Mにはなじみがある人が多いだろう。一方で、太陽光発電所の”リパワリング”という言葉を聞いたことがある方は、日本ではまだ少ないのではないだろうか。

 O&Mとは基本的には、その発電所がきちんと稼働できるよう管理していくことだが、リパワリングは、テクニカル・デューデリジェンス(TDD)によって発電所の品質をチェックし、本来期待される発電量を下回っていると判断された場合に、発電能力をなるべく100%に近づける工事のことである。

 TDDとは、投資対効果、資産価値、保険料率の算出といった事業評価の根拠として、発電所自体の品質や性能を調査・評価する手続きのことである。ドイツを含む欧州では、ほとんどの場合、銀行や投資家、オーナーの依頼によりTDD検査が実施されている。TDDを実施しないまま発電所が稼働してしまうと、初期段階における発電所の状態が分からないため、知らないうちに利益を損ねる可能性が生まれるからだ。

 こうしたTDD実施後に、収益改善の見込みがあると判断された場合は、リパワリング工事をおこなうケースもある。リパワリング工事は、太陽電池モジュールやケーブル、パワーコンディショナーなどの発電所を構成する機器の入れ替え工事なども併せて実施されることがほとんどである。

ドイツで起こった発電所不良の原因とは?

 ドイツでは2007年頃、FIT価格が高く多くの太陽光電所が建設された。しかし、オーナーとなる投資家や銀行は特にモジュール検査などを行っておらず、その後たくさんの不具合が発見された。これを受けて、以降はモジュールの受け入れ検査(全数またはサンプル検査)をするようになったという歴史がある。

 現在、ドイツのみならず欧州の投資家や銀行は、太陽光発電所に投資を行う際に、モジュールの受け入れ検査を必須としているケースがほとんどである。仕入れの時点で一部のモジュールには欠陥が存在し、それが発電量に大きな影響を与える可能性があるということを経験的に知っているからだ。

 ただ、発電量の低下が起こる要因は、モジュール自体の不具合だけでなく、設計や施工に起因するものなどさまざまで、1つに特定することが難しい。日本ではモジュールを輸入した際、施工前にモジュール受け入れ検査をせず、完工後の竣工(しゅんこう)検査も実施していないケースがほとんどだ。そのため、いざ発電量の低下が発見されたとしても、どこに問題の所在があるのかを特定することが非常に困難な状況といえるだろう。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.