狙うは卒FITの住宅太陽光、蓄電池の月額運用サービス登場太陽光(1/2 ページ)

2019年に向けて、“卒FIT”を迎える住宅太陽光を見据えたサービス開発が加速している。伊藤忠商事と東京電力ホールディングス傘下のTRENDEらは、AIを活用した家庭向け蓄電システムと、蓄電池と太陽光発電の利用を前提とした専用電気料金プランを発表した。

» 2018年10月26日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 2019年10月以降、「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」に基づく電力の買取期間を終える住宅太陽光発電が登場しはじめる。こうした“卒FIT”を迎える住宅太陽光発電ユーザーをターゲットにした、新しいサービスの開発が加速している。

 卒FITを迎えた住宅太陽光発電の使い道は、新たに相対契約を結んで売電を行う、もしくは自家消費を行い電気料金の削減に活用するといった方法がある。後者の場合、日中に発電した電力を効率よく使うほど、ユーザー側の経済的なメリットが高まる。こうした太陽光発電の自家消費の効率を高めるキーテクノロジーとして注目を集めているのが蓄電池だ。

 こうした中、伊藤忠商事(以下、伊藤忠)は2018年10月24日、英Moixa Energy Holdings(以下、Moixa)、エヌエフ回路設計ブロック(以下、エヌエフ回路)、東京電力ホールディングス傘下のTRENDEと共同で、家庭向け蓄電システムと、蓄電池と太陽光発電の利用を前提とした専用の電気料金プランを提供すると発表した。卒FITの住宅太陽光発電ユーザーをターゲットにしたサービスだ。2018年11月から提供を開始する。

左からMoixa CTOのクリス・ライト氏、エヌエフ回路 代表取締役会長の高橋常夫氏、Moixa CEOのサイモン・ダニエル氏、駐日英国大使のポール・マデン氏、伊藤忠商事 常務執行役員の石井敬太氏、TRENDE 代表取締役の妹尾賢俊氏、東京電力ホールディングス 常務執行役の見學信一郎氏

 伊藤忠は2013年から、エヌエフ回路が共同開発した蓄電池「Smart Star L」を2013年から販売している。既に1万台以上の出荷実績があるというSmart Star Lは、定格容量9.8kWhのリチウムイオン蓄電池。「全負荷型」のため、停電時に宅内の全てのコンセントに対して電力を供給でき、200Vの出力が可能なため、エアコンやIHI機器などの利用にも対応する。

「Smart Star L」 出典:伊藤忠

 停電時により有効的に太陽光発電を利用できる機能も特徴という。一般的な蓄電システムでは、停電時に太陽光発電を自立運転出力の1.5kWまでしか使えない。一方、Smart Star Lは太陽光発電のパワーコンディショナーに電力供給を行うことで、通常通りに太陽光発電を利用できるという。

 今回発表した蓄電システムでは、このSmart Star Lに、Moixaが開発したAIを活用する電力最適化ソフトウェア「GridShare Client」を組み合わせる。GridShare Clientの特徴は、気象情報や、ユーザーの消費電力量、太陽光発電の発電量などの情報を分析・学習する点だ。その分析結果に合わせて、各家庭に合わせた最適な蓄電池の充放電が可能になる。太陽光発電の電力を消費するか、あるいはどれだけ蓄電すれば最もお得になるか、といった判断を自動で行ってくれるというわけだ。

蓄電池の充放電制御のイメージ

 GridShare Clientは、電池本体の価格とは別に、月額使用料1200円(税別)を支払うことで利用できる。加入する電気料金プランによって異なるが、蓄電池を最適に運用することにより、月額1500円前後の電気代の節約が可能になるという。なお、Smart Star Lの希望小売価格は285万円(税別・工事費別)。GridShare Clientは先行して蓄電池のみを設置しているユーザーも加入可能だ。

 TRENDEは、Smart Star Lの設置とGridShare Clientの利用を前提とした電気料金プランの「あいでんき」を提供する。午前1〜5時までの「蓄電タイム」の電力料金を割安に設定している。割安な蓄電タイムに電力を蓄電しておき、日中にその電力と太陽光発電を使うことで、電気料金を抑えられるという仕組みだ。なお、1年ごとの契約更改時に1万5000円のキャッシュバックも実施する。

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