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» 2018年12月03日 11時30分 公開

蓄電・発電機器:高性能な全個体電池、鍵は界面の原子配列に

東京工業大学、日本工業大学、産業技術総合研究所らの研究グループは、界面抵抗が極めて小さい高性能な全固体電池を実現するためには、界面における原子配列が鍵となることを発見した。高性能な全個体電池の実用化に貢献する成果としている。

[スマートジャパン]

 東京工業大学、日本工業大学、産業技術総合研究所らの研究グループは2018年11月、全固体電池で極めて低い界面抵抗を実現するには、電極表面の規則的な原子配列が鍵となることを発見したと発表した。全固体電池の開発に指針を与える成果であり、実用化に向けた一歩になるとしている。

 固体電解質を用いた全固体電池は、電気自動車(EV)の飛躍的な航続距離向上などに貢献するとして、大きな注目を集めている。実用化に向けて、リチウムイオン伝導性が高い固体電解質と電極材料の開発が進んでいるが、固体電解質と電極が形成する界面で抵抗が高くなる点が、実用化に向けた技術課題の一つとなっていた。界面抵抗が高いと、大電流で使用する時にエネルギー損失が大きくなるため、高速充放電が難しくなるというデメリットがある。しかしこれまで、界面抵抗が高くなる原因は未解明で、これを低減のための明確な指針はなかったという。

 今回研究グループはこの課題の解明に向けて、まず界面抵抗を評価するため、薄膜技術と真空技術を活用して全固体電池を作製した。この試料は酸化アルミニウム(Al2O3)の単結晶基板上に、集電体に金(Au)を、正極にコバルト酸リチウム(LiCoO2)を、固体電解質にリン酸リチウム(Li3PO4)を、負極にリチウム(Li)をそれぞれ積層している。

作製した全個体電池 出典:産総研

 この固体電解質と正極の界面におけるイオン伝導性を評価した結果、界面の作製条件によって界面抵抗が変化し、良好な界面では抵抗が5.5Ωcm2という極めて低い値となることが分かった。この値は、従来報告されていた値の40分の1で、液体電解質を用いた場合の6文の1に相当するという。

 次に、得られた低抵抗界面の状態を探るため、放射光を用いた表面X線回折により固体電解質と正極との界面の構造を精密解析した。その結果、5.5 Ωcm2という低抵抗界面は、界面近傍においても薄膜内部と同様に、原子が規則的に配列された結晶性を持つことがわかった。一方、高抵抗界面では界面形成時に電極表面の原子配列が乱れていたことが分かった。

<strong>表面X線回折で得られた電極と電解質の界面の電子密度 出典:産総研</strong>

 今回の研究で作製したLiCoO2エピタキシャル薄膜の結晶方位では、リチウムイオンは薄膜に平行な面内方向にのみ移動することができ、薄膜に対して垂直に形成される結晶粒界が、薄膜内部へのリチウムイオンの通り道となる。高抵抗界面では、電極表面における原子配列の乱れにより、電極表面でのリチウムイオンの拡散ならびに結晶粒界への拡散が抑制されていることが示唆された。

低い抵抗の界面(左)と、高い抵抗の界面(右)におけるリチウムイオンの振る舞い 出典:産総研

 研究グループは今回の成果について、緻密な構造制御によって界面形成時に生じる構造の乱れを抑制し、界面での規則的原子配列を維持することで、極めて小さい界面抵抗を持つ高性能な全固体電池を実用化できる可能性があるとしている。

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