Innovative Tech(AI+)
経済アナリスト vs. GPT-4──生成AIは金融投資にどれくらい使える? 米シカゴ大が研究報告
Innovative Tech(AI+):
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高いAI分野の科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
X: @shiropen2
米シカゴ大学に所属する研究者らが発表した論文「Financial Statement Analysis with Large Language Models」は、大規模言語モデル(LLM)、特にGPT-4が企業の財務諸表分析においてどのような能力を発揮するかを検証した研究報告である。
従来、財務諸表分析は人間のアナリストの専門領域であり、知識や経験、判断力が重要とされている。しかし、LLMの目覚ましい発展により、この常識が覆される可能性が出てきた。
研究チームは、GPT-4に財務諸表の数値情報のみを入力し、将来の収益の方向性を予測させた。その際、財務諸表に付随するテキストによる業界固有のコンテキスト情報は一切与えなかった。これは、GPT-4が数値情報のみから洞察を引き出す能力を純粋に検証するためである。
実験の結果、シンプルなプロンプトを用いた場合、GPT-4の予測精度は52.33%であり、ファイナンシャルアナリストの予測精度52.71%とほぼ同等であった。しかし、人間のアナリストが行うような分析手法(トレンド分析や財務比率分析など)を踏襲するように指示を与えるプロンプトを加えることで、GPT-4の予測精度は60.35%に達してアナリストを大幅に上回った。
これは、GPT-4が財務データから有用な情報を抽出し、人間のようにステップバイステップで推論を行う能力を備えていることを示唆している。
また、GPT-4の予測精度は、利益予測のために特化した機械学習モデルとも同等かそれ以上であった。この結果は、GPT-4が利益予測に特化したトレーニングを受けていないにもかかわらず、高い予測精度を達成したことを意味する。
GPT-4の予測力の源泉を調べたところ、訓練データセットにあった情報(記憶)を単に再生しているのではないことが分かった。むしろ、財務諸表の数値から理論的な理解と経済的推論を用いて有用な洞察を引き出す能力によるものであった。実際、GPT-4が生成した財務分析のテキストには、それ自体に実質的な情報価値があることを示していた。
最後に、GPT-4の予測に基づいた投資戦略を評価したところ、他の機械学習モデルに基づく戦略よりも高いシャープレシオとアルファ値を示した。つまり、GPT-4を用いることで、より収益性の高い投資意思決定が可能になるということである。
Source and Image Credits: Kim, Alex G. and Muhn, Maximilian and Nikolaev, Valeri V., Financial Statement Analysis with Large Language Models (May 20, 2024). Chicago Booth Research Paper Forthcoming, Fama-Miller Working Paper, Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=4835311 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.4835311
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Innovative Tech(AI+)
2019年の開始以来、多様な最新論文を取り上げている連載「Innovative Tech」。ここではその“AI編”として、人工知能に特化し、世界中の興味深い論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
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