日立製作所は7月29日、AIが生成した文章に多重電子透かしを搭載する技術を開発したと発表した。この技術を使うことで、人間が書いた文章なのか、AIが生成した文章なのかを見分けられるという。この研究を主導した、同社の研究開発グループ先端AIイノベーションセンタの永塚光一企画員は「世界で初めて、AI生成文章に二重、三重と多重に透かしを入れられる技術を開発した」と話す。
文章に電子透かしを入れる仕組みは“単語をグループ分けする”というものだ。例えば、AIが生成できる単語をランダムに2つのグループに分けて、文章を作る際に“できるだけ特定のグループの単語を文章に入れる”ように細工を施す。人間が書いた文章であれば、2つのグループの単語がそれぞれ半分ほどの割合で入るが、AI生成文章では指定したグループの単語の割合が高くなるため“AIが生成した可能性が高い文章”と判断できる。
一見すると普通の文章に見えるため、透かしが入っているのかは分からない。しかし、グループ分けをする際に事前に決めていた“鍵(パスワード)”を使うことで、それぞれの単語がどのグループに入っているか分かり、透かしとして検出できる仕組み。鍵によってグループ分けも異なるため、AIごとに鍵を設定することで“どのAIが生成した文章なのか”も区別可能という。
この技術は、米メリーランド大学の研究チームが2023年8月に発表したもの。今回、日立はこれをさらに進めて、世界で初めて三重以上の透かしを入れる技術を開発した。
多重に透かしを入れる仕組みは、グループ分けをさらに細分化していくことにある。できるだけ文章に入れるように定めたグループの中から“特に入れてほしい単語”のグループを新たに作り、その単語が入っている比率で、より精度高くAI生成文章なのかを判断できる。
永塚企画員は、文章の二重透かしの技術も日本では初であるとし「多重透かしでより堅牢にすることで非常に高い精度で生成元を判別可能になる」と話す。
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