新iPhoneである「iPhone 16シリーズ」は、米Appleのオンデバイス生成AIである「Apple Intelligence」にフォーカスした製品になった。日本語で使えるようになるのは「2025年」とまだずいぶん先だが、同社にとって次への大きなステップであるのは疑いない。
個人向け機器への生成AI導入は、Appleだけのトレンドではない。米Googleや米Microsoft、韓国Samsung Electronicsなども目指す、業界全体のトレンドと言っていい。
ただ、「個人向けのパーソナルAI」的な要素には。「十分な機能が提供できるのか」「期待通りの賢いAIを提供できるのか」という懸念も存在する。
アップルはそこにどう応えようとしているのだろうか。
iPhone 16シリーズは、明らかに「iPhone 16 Pro系」より「iPhone 16系」の方がお買い得である構成に見える。
2023年のモデルはiPhone 15 Pro系に新プロセッサ・新UIなどの新要素が限定され、上下のモデルでの差が大きく見えた。だが24年は、もちろん処理性能やカメラ性能に差はあるものの、プロセッサもUIも、同じ世代のものが搭載される形に変わった。
この変化は全て、Apple Intelligenceに備えるためのものだ。
Apple Intelligenceが動作するiPhoneは、プロセッサとして「A17 Pro」もしくは「A18」「A18 Pro」を搭載していなくてはならない。iPhone 15シリーズまでの場合、iPhone 15 Pro系の2機種のみが対象だった。
Appleとしては、Apple Intelligence対応の機種を増やし、メジャーな存在にしていく必要がある。だとすれば、新機種であるiPhone 16シリーズでは「全ラインアップがApple Intelligenceを動かせるプロセッサを採用している」のが望ましい。
Apple Intelligenceの詳細は後ほど解説するが、要はパーソナルなAIを目指すものであり、現状は高い付加価値を持っている。コストも相応に高い。今回アップルは、かなり大胆に「スタンダードモデルでも世代を前に進める」選択をした……と筆者は考えている。
デザインこそあまり変わっていないが、中身的に言えば24年は「大幅刷新の年」だったわけだ。
なぜAppleは一気に世代を切り替えてきたのか? それは、iPhoneの強みが「均質で高性能」であることだからだ。
実のところ、採用するディスプレイやプロセッサなどの一部を比較すると、他社にはより性能が高いものもある。スペックを見るととがっていない……とも言えるだろう。
しかしiPhoneはトータルなクオリティーや性能が高い。しかもそれが毎年一気に、その年の新機種だけで一億数千万台売れる。AppleはiPhoneのビジネスモデルを「大量に出荷できる高性能モデルである」ことを前提として組み立てており、それがスペックの選択にも反映されている。
アプリやサービスの開発者、周辺機器メーカーから見ると、「均質なハイエンド製品が一気に普及する」構図は非常に魅力的だろう。Apple Intelligenceのような新しい機能を広げていくにも、数の力を活用するのが有利であるのは間違いない。
Apple Intelligenceで使える機能や使い勝手の面で言えば、iPhone 16も16 Proも大きな違いはないという。スペックが高い分、16 Proの方が処理は速くなるものがある可能性はあるが、差はそこまで大きくないと推測できる。ここからも、アップルが「均質な体験を一気に広める」戦略であるのが分かる。
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