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ヒントンさん、「受賞に本当に驚いている」「GPT-4をかなりよく使用している」──ノーベル物理学賞の会見一問一答

» 2024年10月08日 20時34分 公開
[井上輝一ITmedia]

 2024年のノーベル物理学賞を受賞した、AI研究の第一人者であるカナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントンさん。発表会には電話で参加し、取材陣からの質問に答えた。

電話で取材に答えるジェフリー・ヒントンさん(ノーベル物理学賞会見の公式YouTube配信より引用)

 ヒントンさんは一時は米Googleのエンジニアリングフェローなども務めていたが、AIリスクへの懸念を理由に2023年に同社を退職している。質疑応答では、Googleから見れば競合に当たる米OpenAIのGPT-4を「かなりよく利用している」と答える一幕もあった。

受賞についての受け止め

ヒントン(以下敬称略) 呆然としています。こんなことになると思っていませんでした。本当に驚いています。

受賞に至ったブレークスルーに気付いた瞬間を思い出せる?

ヒントン 2人の指導者との出来事を覚えています。デビッド・ラメルハートとテリー・セジュノウスキーには大きな恩義があります。デビッドとは1982年にバックプロパゲーションアルゴリズム(誤差逆伝播法)を発見しました。テリーとは、隠れユニットを持つホップフィールド・ネットワークの学習アルゴリズムを発見しました。

 また、ロチェスターで行われたジョン・ホップフィールド(注:今回の共同受賞者。ホップフィールド・ネットワークの発明など)の講演に参加し、ホップフィールド・ネットワークについて初めて学んだことをよく覚えています。

機械学習で将来さらにどんなことができるようになる?

ヒントン この技術は産業革命のような大きな影響力を持つと考えていますが、人々の物理的な力ではなく知的能力を超えることになるでしょう。私たちは自分たちよりも賢いものを持った経験がなく、さまざまな面で素晴らしいことになるでしょう。例えば、医療でははるかに良い医療を提供するなど、ほぼ全ての産業で効率化がなされます。それは生産性の大幅な向上を意味しますが、同時に制御不能なAIの脅威など、いくつかの悪影響についても心配しなければなりません。

ニューヨーク・タイムズのインタビューではAIリスクを理由に「人生の一部の仕事を後悔している」と言っていたが、いまはどう感じている?

 2つの後悔があります。ひとつは「すべきでないと知っていたのにそれをしてしまったことで罪悪感を感じるもの」、もうひとつは「同じ状況ならもう一度やるだろうが、結局はうまくいかなかったかもしれない何かをしてしまったために後悔するもの」です。

 全体としては、私たちよりも賢いシステムがコントロールを獲得することを懸念しています。

どんなAI研究の基礎になったんですか? GPTとか、乳がんをX線で検出するとか

 私の研究には2つの異なる学習アルゴリズムがあります。ひとつはホップフィールド・ネットワークの隠れユニットの学習アルゴリズムとなるボルツマンマシンで、最終的にはその実用的なバージョンまで見出しましたが、現在のニューラルネットワークの主要な進展にはつながりませんでした。

 主要な進展はバックプロパゲーションアルゴリズムです。これはニューラルネットワークが何でも学習できる方法であり、画像認識、音声理解、自然言語処理などのAIアプリケーションの大幅な増加をもたらしました。

お気に入りのAIツールはありますか?

 GPT-4をかなりよく使っています。なにか答えを知りたいときはいつでもGPT-4にたずねます。ただ、ハルシネーション(幻覚)を引き起こす可能性があるので完全に信頼しているわけではありません。ほとんどの事柄についてとても良い専門家ではないものの、とても有用です。

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