アニメの“応援イラスト”に生成AIを使うのは問題なのか?──テレビアニメの放送が始まったWeb漫画「ぷにるはかわいいスライム」公式Xアカウント(@PUNIRUcorocoro)が掲載したイラストが、物議をかもしている。制作過程で生成AIを使っていたためだ。
同作の公式Xは10月8日、アニメの放送開始を記念し、さまざまな漫画家が描いた応援イラストを紹介する企画を開始。その第1弾として、漫画「ゲームセンターあらし」などの作品で知られる漫画家・すがやみつるさんのイラストを掲載した。この時点では、イラストに生成AIを利用したことは明記していなかったが、一部のXユーザーが「背景にAIイラストを使っている」と指摘していた。
その後も複数のXユーザーが生成AIを利用しているとコメント。中には「倫理感が終わってるジジイ」「ぜってー見ねぇよ AIクズ」など、誹謗(ひぼう)中傷ともとれる書き込みも見られた。さらに、X上の投稿をまとめられるサイト「Togetter」上には「【【すがやみつる】某漫画家、寄贈イラストに生成AIを利用か?【ぷにるはかわいいスライム】」のタイトルでまとめ記事も作られた。
まとめ記事を見たすがやさんは自身のXで反応し、寄贈したイラストの一部に生成AIを使っていたことや、その理由などを説明した。すがやさんは、米OpenAIが提供し、商用利用も可能な画像生成AI「DALL-E3」を使い、背景にある月のイラストを作成したと明かしている。
「このイラストに生成AIに出力してもらった画像を使ったのは『リアルな月面画像を使いたい』という表現の方法を考えてのこと。また別にAIを使っていることを隠すつもりもないため、あえてAIらしさが残る画像を使った。手もとには、著作権上問題がない月面の写真がたくさんある。これらの写真を使ってもよかったが、これまでもたびたび使っているので、ちょっと新しいことをしてみたくなり、生成AIを使った」(すがやさん)
生成AIを使っていたことを示すクレジットとして「背景:DALL-E3」を入れたつもりだったが、レイヤーを表示させるのを忘れていたとも説明。クレジット表示があるファイルを送り、差し替えてもらう予定という。「不要だと思ってもいるが、このような反応も起こるので」とすがやさん。
寄贈イラストに生成AIを使ったのは背景にある月の部分のみで、人物は自身の手で描いたと説明しており、自身のXでラフイラストを投稿した。すがやさんは「生成AIについては、多くの問題が指摘されているが、この背景のような使い方なら、他の漫画家、イラストレーターにも迷惑はかけていないはず。好き嫌いで判断されるのは仕方ないが、私は、これからも節度を守りつつ生成AIを使っていきたいと考えている」と自身の考えを語った。
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