米半導体大手NVIDIAとソフトバンクは11月13日、日本におけるAIインフラの構築で包括提携すると発表した。NVIDIAのチップを先行利用して、ソフトバンクがAIデータセンターを構築し、全国20万カ所の基地局網を活用してAIサービスを全国展開する。世界最大級の演算処理能力を持つAIインフラを国家レベルで整備する取り組みは世界初となる。
発表は都内で開催された「NVIDIA AI Summit Japan」で行われ、NVIDIA創業者兼CEOのジェンスン・フアン氏とソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏が共同で構想を明らかにした。世界的なAI覇権競争が激化する中、両社は日本における「データ主権」と「AI主権」の確立を目指し、産業競争力の回復に向けた本格的な巻き返しを先導する。
2025年初めの稼働を予定しているAIデータセンターは、現存する世界最大のスーパーコンピュータの25倍となる25EFLOPS(エクサフロップス)の処理能力を実現する計画。国内企業や研究機関に開放し、次世代AI開発の基盤として活用する方針だ。
NVIDIAとソフトバンクが描く「AIグリッド構想」は、AIの開発基盤となる「AIファクトリー」と、その成果物を全国に配信する「AI RAN(無線アクセスネットワーク)」の2層で構成される。
「これは通信ネットワークをAIネットワークに変革する、世界初の試みです」とフアン氏は語る。ソフトバンクの全国20万カ所の基地局網を活用し、従来の音声、データ、映像に加え、AIモデルやAIサービスといった新たな形態の情報も配信可能にする。
構想の中核となるAIファクトリーには、NVIDIAの最新GPU「Blackwell」(ブラックウェル)を搭載したスーパーコンピュータを導入する。
「企業は自社の知的活動を担うAIを自ら製造することが必須となる」とフアン氏は強調。孫氏も「これまでの通信基地局は単なるビットを運ぶだけだったが、このAIネットワークにより、日本のためのインフラとして一つの大きな神経網となる」と展望を示した。同氏によれば、研究者や学生、スタートアップ企業向けに計算資源を開放し「ほぼ無償で利用できる」仕組みも検討しているという。
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