技術論争乗り越え事業化フェーズへ 躍進する「Sakana AI」、創業者デイビッド・ハー氏の狙い(1/3 ページ)
米中が主導するAI開発の覇権争いに、日本発のスタートアップが新たな変数として浮上している。創業からわずか18カ月のSakana AIが、革新的な「省資源型AI開発」を武器に、グローバルな存在感を示し始めた。急成長の一方で技術的な論争も経験しながら、このほど事業開発本部を設立し、研究成果の社会実装へと本格始動。世界的AIスタートアップとしての真価が問われる新たな段階に入った。
「日本は強い民主主義国家として、独自のAI技術を持つべきだ」。2月7日、東京大学で開催された第5回Beyond AI研究推進機構国際シンポジウムで、Google Brain(現Google DeepMind)の元研究者で同社創業者のデイビット・ハー氏はそう語った。米中が主導するAI開発の現状に一石を投じ、AI開発に必要な計算資源を100万分の1に削減する革新的な技術を武器に、新たな覇権獲得に挑む。
世界のAI開発、米中の二強構造に風穴を
「現在のAI技術開発は、ベイエリアか北京のいずれかに集中している。日本は独自の技術開発を進め、AIの最前線に立つ必要がある」。2023年夏、Sakana AI創業者のデイビット・ハー氏は、シリコンバレーの投資家たちを前にそう語った。
ハー氏は、カナダ出身ながら日本での居住経験を持つAI研究者である。金融機関ゴールドマン・サックスでの勤務を経て、16年に米GoogleのAI研究部門であるGoogle Brain(現Google DeepMind)に参画。大規模な画像生成や機械学習の研究開発を手掛けた後、日本に活動の拠点を移した。東京大学で博士号も取得している。
23年8月に設立されたSakana AIの共同創業者には、「Attention is All You Need」論文の共著者として知られるライオネル・ジョーンズ氏が名を連ねる。この論文で提案されたTransformerと呼ばれる技術は、ChatGPTなど現代の大規模言語モデルの基盤となっている。さらに、外交官から投資銀行、IT企業でのIPO支援まで幅広い経験を持つ日本人の伊藤錬氏も経営陣に加わった。
「日本は民主主義国家として、独自のAI技術開発の基盤を持つべきである」とハー氏は語る。その背景には、AI開発における世界情勢への考えがある。例えば半導体分野では台湾のTSMCが世界的な存在感を示しているように、AIの分野でも米中以外の技術的優位性を確立できる可能性があるとハー氏は見ている。
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