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日本解禁のiPhone AI「Apple Intelligence」とは 使える端末・できること・できないことをチェック

» 2025年04月02日 08時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 3月31日、米AppleがiPhoneやiPad、Mac向けAI機能群「Apple Intelligence」のβ版を日本でも利用可能にした。すでに米国などでは提供されていた機能群だが、新しくどんなことができるようになるのか。

Apple Intelligence、使えるデバイスは?

 Apple Intelligenceは以下のデバイスで利用可能。それぞれOSをiOS 18.4、iPadOS 18.4、macOS Sequoia 15.4にアップデートすることで有効にできる。ただしアップデート直後から全機能が使えるわけではなく、更新が終わった後にモデルをダウンロードする必要がある。特別な操作は不要だが、Wi-Fiに接続できる環境で数分から十数分程度待たなければいけない。

iPhone

  • 「iPhone 16e」
  • 「iPhone 16」
  • 「iPhone 16 Plus」
  • 「iPhone 16 Pro」
  • 「iPhone 16 Pro Max」
  • 「iPhone 15 Pro」
  • 「iPhone 15 Pro Max」

iPad

  • 「iPad Pro」(M1以降のチップを搭載したモデル)
  • 「iPad Air」(M1以降のチップを搭載したモデル)
  • 「iPad mini」(A17 Proチップ搭載モデル)

Mac

  • 「MacBook Air」(M1以降のチップを搭載したモデル)
  • 「MacBook Pro」(M1以降のチップを搭載したモデル)
  • 「iMac」(M1以降のチップを搭載したモデル)
  • 「Mac mini」(M1以降のチップを搭載したモデル)
  • 「Mac Studio」(M1 Max以降のチップを搭載したモデル)
  • 「Mac Pro」(M2 Ultra以降のチップを搭載したモデル)
photo 対応デバイス(Apple公式サイトから引用)

AIが実現、6つの新機能

 新たに使えるようになった機能は大きく分けて6つで、いずれも日本語で使える。

作文ツール 構成や要約、表への変換

 1つ目は「作文ツール」だ。指定した文章を校正・要約したり、文体を変更したりできる。表・リスト形式に変換したり、箇条書きに直してもらったりもできる。プロンプトを指定して、書き直しを命じることも可能だ。

photo 作文ツール

 作文ツールではChatGPTと連携も可能。ChatGPTのWeb検索や画像生成機能などを、ツールを通して利用できる。

「消しゴムマジック」風の画像加工なども

photo 画像加工機能の利用イメージ

 2つ目はカメラ・写真アプリのアップデート。米Googleの「消しゴムマジック」に似た加工機能や、テキストによる指示に沿った写真を検索できる機能が利用可能になった。プロンプトで指定したテーマを基に写真を選択し、スライドショーを作ってもらえる「メモリー」も登場した。

画像生成も可能に 絵文字も作れる

 3つ目はApple Intelligence独自の画像生成機能だ。アプリ「Image Playground」などで、独自の画像を生成可能に。さらに、オリジナルの絵文字を作れる「ジェン文字」も使えるようになった。メモアプリには、書き込んだスケッチや、その周囲にある文字などを基に画像を作れる「画像マジックワンド」も追加した。

photo Image Playgroundで作った焼き肉の画像

通知を要約、優先順位付けも

 4つ目は通知の要約機能だ。通知メッセージの内容を要約し、さらに優先順位をAIが判断して表示してくれる。メールアプリ内でも、メールの要約を表示したり、表示順をAIに任せたりすることが可能になった。電話アプリとメモアプリでは音声の録音・要約・文字起こしも可能になった。

photo メールの要約表示のイメージ。矢印の先が要約文

Siriもパワーアップ

 5つ目は音声アシスタント「Siri」の強化だ。応答の柔軟性が増し、今まででは対応できなかった問いかけにも応じられるようになった。作文ツールと同様ChatGPTとの連携機能も有し、音声・チャット経由でWeb検索を併用した調べ事をしてもらったり、新しい画像生成機能を使ったイラストの生成もできる。

photo 新しいSiriは起動時のUIも変化。虹色の枠が画面を囲むようになった

カメラを通した画像認識も

 最後は画像認識機能「ビジュアルインテリジェンス」。米Googleの「Googleレンズ」に似たもので、iPhoneのカメラを通して文章や画像を認識し、翻訳・検索が可能になった。例えばカメラを映せば、それがどんな製品なのか検索できる。ChatGPTと連携すれば、被写体がどんなものなのか説明してもらうことも可能だ。

photo ビジュアルインテリジェンスで、カメラを映した様子。左右のボタンから被写体について質問・検索できる

 iPhone 16eを除く16シリーズでは本体側面の「カメラコントロール」ボタンから、15 Pro、15 Pro MAX、16eではこれに加えコントロールセンターやアクションボタンに設定したショートカットから起動できる。

photo コントロールセンター上の起動ボタン(画面左下)

情報の安全性は? 基本的にユーザー情報にはアクセスしないが……

 Apple Intelligenceでやりとりされる情報について、Appleはユーザーのデータにアクセスすることなく、AIの処理はデバイス上で行うとしている。性能が足りない場合にクラウドに接続して処理を補助する「Private Cloud Compute」という仕組みもあるが、Appleはデバイスとクラウド間でやりとりされた情報にはアクセスせず、保存もしないという。

 ただしデバイス上で自分のChatGPTアカウントにログインしながら使う場合、ChatGPTを使う際はOpenAI側に情報が送られることになる。写真や文章をChatGPTに送る際は、基本的にユーザーに確認の通知を行う仕様だ。

photo 情報送信時の通知

で、便利なの? サクッと触った感想

 では、実際の使い心地はというと……あくまでiPhone経由で20〜30分ほど触った範囲での意見だが、記者の感想は「発展途上だな」だった。

 記者はiPhone 15 Proで利用したが、レスポンスこそ悪くないものの、各機能で仕事や日常が便利になるかといわれれば微妙だ。画像生成機能で作れるのはいずれも海外風のイラストが多く、日本で仕事をするに当たって便利そうなものが出てくるかと言われれば、そうではない(ジェン文字はちょっとしたおふざけをする分には楽しそうだが)。

 iPhoneで長い文章を書く機会も少ないため、作文ツールもさほど魅力的ではない。写真・カメラ関係やビジュアルインテリジェンスも、使いどころはありそうなものの、目新しくはなく、驚きもない。

 ただし要約まわりは悪くない。精度に不満がないでもないが、自分が何もしなくても、重要度の高い情報を優先表示してくれるのはありがたい。記者という職業柄もあるが、音声文字起こしの利便性が向上したのもうれしい。

 ChatGPTとの連携機能は便利だが、iPhoneからChatGPTを使いたい理由があまりない。画像生成やWeb検索は使えるものの、記者が重用している調査機能「deep research」は使えず、アプリを経由した場合などに比べて体験が向上しているわけでもなかった。

 総じて、現時点では劇的に便利になった感覚はあまりなかった。Apple Intelligenceは現時点でβ版で、今後も機能追加予定とのことなので、これからの改善に期待だ。もちろんMacから使ったり、もっと長期的に使い続けたりするとまた別の景色が見える可能性もある。

 個人的には要約機能のように、ユーザー自身が主体的な操作をせずとも各種表示や入力を自動で“いい感じ”にしてくれる機能の充実を待望している。

著者:吉川大貴

ITmedia AI+、ITmedia NEWS編集記者。2020年にアイティメディアに入社。ITmedia AI+ではAIツール・サービスのレビュー記事などを執筆。ITmedia NEWSでは主にAWSやさくらインターネットなどのクラウドインフラ動向やITスタートアップ、ゲーム業界の取材を担当し、社内の編集表彰を複数回受賞している。


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