川崎重工業は、4月13日に開幕する「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)で、人が乗れる四足歩行ロボット「CORLEO」(コルレオ)のコンセプトモデルを展示する。同社は9日、記者向けにコルレオの実機を一足先に披露。開発経緯などを明かした。
コルレオは、2050年の移動手段をイメージして開発したロボット。頭のない四足動物のような見た目をしており、山岳地帯のような険しい道での走行を想定。実際に操縦はできないが「乗り手の重心移動を、前方のハンドル部分と、前脚と後脚の間にあるステップで検知して操縦する仕組み」「動力源には発電用水素エンジンを採用し、電力で4脚に搭載したパワーユニットを駆動する」などの設定を構想している。
万博では、その場で体勢を上下させる姿を披露。乗り手の姿勢を保つために搭載した、後脚部と前脚部が分かれて縦にスイングする機構の様子を見られた他、脚の先端に取り付けたひづめ型の部品なども確認できた。
川崎重工業は、なぜコルレオのような四足歩行ロボットを開発したのか。万博に展示するコンセプトモデルの企画時、最初に決めたテーマが「移動本能」だった。
同社は造船業で事業を始め、船以外にも鉄道や二輪バイクなどさまざまなモビリティを手掛けてきた。今回同社は「人は移動するほど幸せを感じる」という米マイアミ大学の研究などを参照。人には「移動本能」があると仮定し、これを刺激する乗り物の開発を23年に始めた。結果、動物をモデルに脚で移動する乗り物の構想が生まれたという。
一方で「カワサキ」と言えば、二輪バイクを思い浮かべる人も多いだろう。車輪ではなく脚での移動を選んだのは、「道なき道を乗り物で行く」といった体験を多くの人に提供するためという。
「バイクのプロライダーは、どんな道でも、極端に言えば崖でも駆け上がることができるけれど、それは本当に一部の限られた人しかできない。それを誰もが安全にチャレンジできるようにしたかった」(川崎重工業)
この構想を具体化するため、脚の本数やモデルとする動物などを検討。最終的にはコルレオという名前の通り、ライオンをモデルに採用(Leoは英語で獅子座の意)し、現在のデザインに至った。首や頭、尾などの要素を省いた理由を聞くと「あくまでモビリティらしさを追求した」「動物の要素を削りながらも、かといって乗り物すぎないバランスを狙った」と説明した。
ちなみに当初モデルにしていた動物はチーター。走る速度が速いというイメージから選んだというが、モビリティとしての安定性を考え、より身体の大きいライオンにしたという。
今回の万博で展示するのは、あくまでコンセプトモデルであり、実際に走行できるわけではない。一方、川崎重工グループでは産業用ロボットの先進技術を使い、二輪バイクを開発するチームの参加のもと「机上ではあるが、基本設計まではしっかり行った」という。「まだ会社として開発しようというフェーズではない」としつつ、万博に試験的に来場者を招く「テストラン」では、非常に反響が大きかったとして、今後の展望を語った。
「万博に来場した皆さんの反響が大きければ『じゃあこの先、川崎、本気になりますか』ということで考えている」(川崎重工業)
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