「G-SHOCK」新作、AIを活用した開発の実態は? カシオが語る“カッコよさ”を作るための工夫(2/3 ページ)
AIで「トライ&エラー」増加
MTG-B4000の特徴の一つが、段差の付いたリング状のカーボン素材に、Xの形をした2つのメタルパーツを組み合わせた複雑なフレーム構造だ。メタルパーツのXの上半分でカーボンのリング部分とドッキングできるよう設計。下半分がバンド部分にそのままつながる形状をしており、フレームとバンドをビスで固定せず直接つなげる仕組みになっている。
この複雑な形状をどのように生み出したのか。泉さんは、要因の一つにデザインにおける「トライ&エラーのしやすさ」を挙げる。普段の開発では、人間が荷重シミュレーションを実施する。一方、AIに荷重シミュレーションをさせることで、A案、B案、C案とより多くのアイデアを試すことができた。
また、事前に多くの荷重シミュレーションを試すことで、プロトタイプの耐衝撃性能の検証段階でデザインが修正になるリスクを低減できたことも大きい。「基本はほぼない」というが、まれに実物での試験で割れや曲がりが発生。「ここの金属ベゼルの厚さを2倍にしてもらえない?」といった思いもよらない修正が入ることもある。「複雑な構造なので、ある程度(デザイン案の)プロセスで確認が取れるのは良い点だった」(泉さん)。
AIが出すデザインは“どんくさい”ことも
とはいえ、AIが提案するアイデアをそのまま採用し、MTG-B4000をデザインしたわけではない。今回の開発で活用したAIは、材質ごとの耐衝撃性能の計算など、物理的な要件に対するアウトプットに強みを持つ。一方、審美的な観点では、人間のデザイナーにかなわない部分もある。
例えば、X状のメタルパーツは、立体形状の面ごとに、光沢のある面とヘアラインを付けた面を使い分けている。泉さんによると、AIが出すデザイン案のなかには「これ(X状のメタルパーツ)も、最初はこんなにカッコいいパーツではなく、ちょっとどんくさい、大きくてただ太い」といったものもあったという。
一方、人間のデザイナーは「工場でどういう人がどういう金属加工するのかまで頭の中に入っている。そこまで描いてデザインする」と泉さんは指摘する。このため開発では、物理的なシミュレーションをAIにまかせつつ、見た目の美しさをデザイナーの経験や感性によって補った。
例えば、フレームのカーボン部分は、耐衝撃性能とデザイン性を両立するため、側面から見て弓型になる段差を付けた。またベゼルは、腕に装着した際のなじみを良くするため、12時と6時方向に傾斜。ガラスの風防の周囲には数ミリ高い突起を付けて落下時にガラスを守るなど、デザイナーならではの細かな調整により、“G-SHOCKとして成り立つ”デザインに仕上げた。
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