MTG-B4000の発売から約1カ月、ユーザーの反応はどうだったのか。泉さんは「お客さんにはたぶん、AIのところは一切響いていない」と明かした。一方で「それでいいかなと思っていた」という。
「『AIで作ったG-SHOCKか、すげえな』とならないことは、企画時から想像がついていた。あくまでMT-Gラインの新作ですと。今、最もMT-Gのなかで進化したバージョンがこれですというのが前面にあった。AIは、あくまでそれを補佐するツールでしかなかった」(泉さん)
もちろんAIがあったからこそ、新たな構造が生み出せたという側面はあると泉さん。それでも、ユーザーに響くのは「カッコいいかどうかに尽きる」と指摘。「本末転倒な企画」にならないよう意識していた。「もっと軽く、着けやすくと、AIにやらせていくと、謎の細い線でできた『これ、G-SHOCKなの?』みたいなものになってしまう。そこは目指していなかった」(泉さん)
泉さんは、今回のAI活用について「(開発の)時間がすごく短くなっているかというと、実はそうではない」と語る。というのも、アイデアを試行錯誤する回数が増えたためだ。「世の中でいう『AIによる効率化』とはちょっと違う使い方かなと思う。新しい形を発見していくためにAIを使っていた」と振り返った。
また試行錯誤が増えた結果、今回は使われなかったボツ案も多く生まれた。こうした案については「ちょっと次の新商品で使えそうだな」と思うものもあったという。
今後も、G-SHOCKシリーズの開発でAIを活用するのか。泉さんは「企画のコンセプトに応じて使い分けをしようかなと思っている」と展望を明かした。商品企画とデザインチーム、設計チーム共同で検討し、コンセプトに沿う場合はAIを活用する予定だ。
「われわれG-SHOCKチームは、昔ながらの作り方をしつつ、例えば素材などで、必ず新しいものを取り入れる開発をしている。すると、やっぱり新しいものが生まれてきて、次の開発につながっていく。(今回は)小さな1歩だと思うが、次はAIと別の何かを掛け合わせれば、シナジーが出るのではないか。そんな具合で掛け算式に増えていく。そこは今回、チャレンジしてみて良かった」(泉さん)
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