「どんな環境で働けば生産性が上がるのか」をAIで分析──イトーキは7月29日、松尾研究所と共同で、こんな研究を始めたと発表した。ウェアラブルデバイスで取得する睡眠データ、メールやチャットなどのオンライン行動履歴などをAIで統合的に分析。データに基づいて「どんな環境で働けば生産性が上がるのか」を科学的に解明し、オフィスの改善提案サービスに生かすという。
記者向けの発表会には、イトーキの湊宏司代表取締役社長や、松尾研究所の技術顧問を務める東京大学の松尾豊教授などが登壇。分析手法や、研究に着手した背景などを明かした。
松尾研究所の大西直氏(シニアデータサイエンティスト)によると、研究では、画像や音声、テキストなど複数のデータを組み合わせて環境を認識するマルチモーダルなAIを活用するという。
具体的には4つのデータソースを統合的に分析する。1つ目は米Google傘下のFitbitなどのウェアラブルデバイスから取得する、睡眠時間や活動量といった生体データ。2つ目はビーコンを使用して把握するオフィス内での移動や滞在エリアの位置情報。3つ目はチャットやメール、Web会議ログなどのオンラインコミュニケーションの履歴。4つ目が約90問のサーベイによる主観的なパフォーマンス評価データだ。これらをマルチモーダルなAIで統合的に分析し、生産性との関連を明らかにする。
「生産性が上がったか」を測る指標をどう定めるべきかも、今回の研究テーマとなる。今回の研究では、売上や利益など単一の指標を追うのではなく「パレット」と呼ぶ複数の指標を用意。業種・業界ごとの最適なパレットを模索するという。
一般的に生産性の分析では、最終的な売上や利益だけでなく、そこに至る過程の指標が重要と大西氏。米Googleによる2021年の研究を引用し「仕事への熱意、同僚へのサポート、有益なフィードバックといった中間指標を含めることで、生産性の予測精度が上がることが示されている」として、適切な中間指標を検討していく。
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