一方で3社も、それぞれ不安や課題を抱えながらAI機能と向き合っているという。例えばフリーの木村氏は「ユーザーが、本当に反応してくれるものを当てにいくのが結構大変」と率直に語る。
社内のAIチャットサポートは「100%プロダクトマーケットフィット」と自信を見せる一方、顧客向けでは「エンドユーザーが直接使うものになった時に、最初の1歩を越えてもらう」のが難しいと話す。チャットというUIが最適なのかも検証が必要だ。過去の低品質なチャットbotに対する悪印象も「負債」としてユーザーに蓄積されていることもハードルになっているという。
AIで解決できる顧客の悩みを発掘するのも、一筋縄ではいかない。サイボウズの栗山圭太氏(執行役員事業戦略室長兼マーケティング本部長兼グローバル事業本部長)は「AIエージェントを使いたいかどうかというよりも、提供したい機能があるかどうか」と話し、AIエージェントでなければ解決できない顧客の明確な悩みが現時点では見当たらないと明らかにした。
ディップの課題はより具体的だ。同社の長島圭一朗氏(執行役員CTO兼ソリューション開発本部長兼メディア開発統括部長兼プラットフォーム開発統括部長)は「最大の課題は日本語。難しい推論よりも、日本語の怪しい表現をどう処理するかが問題」と明らかにした。
求人審査では微妙な日本語のニュアンスを正確に判断する必要があるが、「(AIは)海外産の製品なので、どうしても日本語が課題になる」長島氏。現状AWSを通して利用できるモデルでは、米AnthropicのClaudeシリーズが最も日本語性能が良いと判断しているという。
AWS Japanは2028年までに企業向けアプリの33%がエージェントAIを導入するというガートナーによる予測を示すが、現場の実感はまだ異なる様子だ。AIを自社プロダクトに組み込んで顧客に価値を提供する領域では、技術的な実現可能性と顧客ニーズとの間にまだ大きなギャップがあるのが実情といえる。こうした課題を乗り越えた企業こそが、次の成長ステージをつかむことになるかもしれない。
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