生成AIで具体的にどうビジネスを効率化・加速するのか。生成AIはさまざまなポテンシャルを持っているがゆえに、業務への適用方法が分からないという声もしばしばある。
そんな中、与信管理などを手掛ける三井物産クレジットコンサルティングが、LayerXのAIワークフロー「Ai Workforce」を使い、とある業務にかかる時間を半分以下へ短縮することに成功したという。
三井物産クレジットコンサルティング(以下、MCC)では与信管理のコンサルティング事業の一環として、海外企業の分析レポート作成業務を行っている。この業務では、アニュアルレポートなどの海外企業の開示資料を分析し、企業の与信状況を評価するレポートを作成する。
「人の目で全部ドキュメントをつぶさに見て、例えば役員の情報がここに書いてあるとか、売上がここに書いてあるというのを一つ一つ見て、それを所定のフォーマットに転記していく作業を人の手で年間かなりの件数やっていました。非常に人のリソースが割かれていて、効率化しなければいけないという課題意識がずっとありました」──そう話すのは、MCCの次世代商品企画室でマネージャーを務める瀧澤弘晃氏。
一件のアニュアルレポートを分析してコメントを作成する業務は、これまでは2〜3時間ほどかかっていたという。
業務の自動化というと、RPAやローコード・ノーコードツールといった選択肢も考えられる。しかし、MCCが扱う海外企業の分析業務はそうした従来型の自動化手法では対応が難しかった。
LayerXの部門執行役員でAi Workforceを担当する中村龍矢氏は「アニュアルレポートは会社によって情報の掲載場所が異なりますし、自然文のテキストも豊富に含まれています。RPAは『何ページ目の右上』といった位置が決まっていればルールをロボットに組み立てることができますが、取りたい項目がどこにあるかは会社によって、同じ会社でも年度によって異なります」として、従来のルールベースな手法では困難があったことを指摘する。
特に「役員がどうか」「事業内容がどうか」といった定性的な情報を含め、人が分析メモや文章を書く部分は既存技術では自動化できなかった。「LLMはそういうところに特化して強いという印象があった」(瀧澤氏)
MCCとLayerXの出会いは2023年秋ごろ。MCCの親会社である三井物産が、LayerXにも出資していることからの縁だった。当時、LayerXではAi Workforceという名称ではまだ製品化していなかったものの、前身となる基盤はすでに構築を始めていた。
LayerXといえばかつてはブロックチェーン事業、近年では経理SaaS「バクラク」のイメージも強いが、生成AIに対しても波が来始めたタイミングから事業化に乗り出していたということだ。
Ai Workforceの中核をなすのが「AIワークフロー」機能だ。これは、さまざまな処理をブロック状につなげて業務フローを構築するもの。ブロックでは「文書のどこに着目し、どういう情報を取得して、どう出力するか」をAIに教えることで情報を加工していく。基本的にはLayerXがワークフローの雛形を構築し、それを顧客が自分で修正・調整できる仕組みになっている。
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