東京都の行政DXを推進する団体であるGovTech東京は8月19日、都が運営するスタートアップ支援拠点「Tokyo Innovation Base」(東京都千代田区)で、行政における生成AI活用をテーマにしたイベントを開催した。都がAIに対する取り組み方針などをまとめて7月に発表した「東京都AI戦略」をテーマに、パネルディスカッションも実施。東京大学の松尾豊教授らが、同戦略の評価や今後の展望などを語った。
パネルディスカッションには、日本マイクロソフトの大山訓弘氏(業務執行役員・パブリックセクター事業本部、安全保障・自治体戦略統括本部長)や、LayerXの松本勇気氏(代表取締役CTO)、東京都の辻正隆氏(デジタルサービス局デジタル戦略部長)、GovTech東京の井原正博氏(業務執行理事兼CTO)が登壇。松尾教授もオンラインで参加した。
東京都AI戦略では、2050年代に目指す東京の姿を達成するため、35年をめどに取り組む政策をまとめた「2050東京戦略」の中核技術に、AIを位置付ける。「都政におけるAI利活用」と「多様な主体とのAI利活用促進」の視点から、都のAI活用方針をまとめている。
例えば、都政におけるAI活用では、行政に関する申請・通知といった都民サービスや、都の職員の業務などにAIを導入する。一方、多様な主体と連携したAI活用の促進では、都が開催するスタートアップカンファレンス「SusHi Tech Tokyo」を軸としたスタートアップとの協働や、大学とのAIに関する共同研究などを実施。教育現場でのAI活用や、高度なAI専門人材の育成も後押しする。
これに対し、辻氏は「東京都、本気でAIに向き合うぞ」と宣言。AIの導入を目的とするのではなく「成し遂げたい施策の手段として、AIをしっかり使っていく」と説明した。
また、東京都AI戦略の策定にも携わった松尾教授は、同戦略について「非常に良いものができた」と振り返った。内閣府のAI戦略にも関わる経験から「国は、全体としてのAI戦略、R&Dや人材育成、リスク、法制度の問題など大枠でやっているのに対し、東京都はきちんと活用を進めていくことを前面に押し出している」と分析。加えて「都が先陣を切ってやることで、全国の自治体や都道府県も付いてくるはず」として、行政におけるAI活用が全国的に広がるきっかけにもなるとの見解を示した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.