小林啓倫のエマージング・テクノロジー論考
詐欺師の次のターゲットはAI──「AIエージェントブラウザ」に潜む危険 複雑化する詐欺への対策は(1/3 ページ)
NHKの番組「首都圏ネットワーク」の中に、「STOP詐欺被害!」というコーナーがある。実際に発生したさまざまな詐欺の手口を、物語仕立ての映像で教えてくれるが、正直なところ「なぜこんな単純な手口でだまされるのか」と疑問に感じる回もある。
しかしそれは、冷静な状況で客観的に映像を見られているからだろう。いきなり詐欺電話がかかってきたら、多くの人々が詐欺師のペースに巻き込まれてしまうに違いない。だからこそ、事前に詐欺の手口を、できる限り多く知っておく必要があるといえる。ただ、そうした詐欺の情報を頭に入れておく必要があるのは、もはや人間だけではないようだ。
Web閲覧やWebサービス利用を効率化してくれるテクノロジーとして、進化と普及が期待されている「AIエージェントブラウザ」(Agentic Browser)について、単純な詐欺への脆弱性があるという指摘が注目を集めている。
AIエージェントブラウザとは何か?
AIエージェントブラウザとは、簡単に言ってしまえば、いま注目されている「AIエージェント」と一体化したWebブラウザのことを指す。ユーザーが自然言語で指示するだけで、内蔵されたAIエージェントがそれを理解し、ユーザーに代わってWebのブラウジングやWebサービスの操作を行ってくれる。先端テクノロジーの常として、名称も定義もまだ定まっていないのだが、本稿の中ではこの呼び名で統一しておきたい。
どのようなことがAIエージェントブラウザで可能になるのか。代表例の一つである、Webブラウザ「Opera」の「Browser Operator」という機能のデモ動画をご覧いただこう。
動画内ではまず、ユーザー(画面には登場しない)が「男性用サイズ10の白いナイキの靴下を12足探して」と指示する。すると勝手にブラウザが動き(これもユーザーの姿が映るわけではないため、トリックは行われていないと信じることしかできないのだが)、ウォルマートのサイトにアクセスして、指定された商品をカートに入れ、ユーザーが購入の操作を完了させるのを待つ。
次にユーザーは「4月に行われるニューカッスル・ユナイテッドのプレミアリーグホーム戦のチケットを2枚購入して、レギュラーチケットが無ければホスピタリティチケット(プレミアムチケット)でも大丈夫」と指示。するとAIエージェントはニューカッスル・ユナイテッドの公式サイトにアクセスし、4月の試合のチケットを見つけ、1枚240ポンドのチケットを2枚買い物かごに追加、ユーザーの購入完了を待つ。さらに……といった具合だ。
もちろんOperaは以前からあるWebブラウザで、AIエージェントブラウザとして開発されたものではない。AIエージェントを後付けすることで、「ユーザーが自然言語で指示するだけで、AIエージェントがそれを理解し、ユーザーに代わってWebのブラウジングやWebサービスの操作を行う」という状態を達成している。
もう一つのAIエージェントブラウザの代表例であるPerplexityの「Comet」は、最初からAIエージェント内蔵のWebブラウザとして設計されたものだ。これも公式のデモ動画があるので載せておこう。ここではロンドン塔から始まるウオーキングルートの作成や、ドキュメントやRedditの投稿などの要約、メールやカレンダー、ソーシャルメディアなどの連携といったユースケースを紹介している。
また独立したWebブラウザではないが、Webアプリケーションとして提供中のAIが、そのアプリケーション内で仮想ブラウザを立ち上げ、そこでAIエージェントが動くという例もある。この代表例として、ChatGPTで提供されているOperator機能が挙げられる。こちらも公式デモ動画があるので、以下に掲載しておこう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小林啓倫のエマージング・テクノロジー論考
生成AIやメタバース、新たなサイバー攻撃など、テクノロジーの進化が止まらない。少しずつ生活の中に浸透し、その恩恵を預かれることもある一方、思いもよらない問題を生み出すこともある。このコーナーでは、さまざまな分野の新興技術「エマージング・テクノロジー」について、小林啓倫氏が解説する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia AI+に関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
よく見られているカテゴリー
アクセスランキング
-
1
東大松尾研が「LLM講座 基礎編」の講義資料を無料公開 期間限定で
-
2
2年間で「1万時間」削減 「1円の誤りも許されない」ソニー経理が“まず試してみる”DX集団に化けたワケ
-
3
Google Chromeの新機能「Skills」 AIプロンプトの“毎回手打ち”を不要に
-
4
AIコスト高騰で中国DeepSeekへの“乗り換え”続出か 米国決済サービスの支出調査で明らかに
-
5
人型ロボブームを“先駆者ホンダ”はどう見る? 「悔しさもあるが……」 次の一手を聞いた
-
6
「家庭教師のトライ」が学力診断にAI活用 20問解くだけで弱点を推定 生徒と講師の負担減らす
-
7
ローカルLLMは本当に手元で動くのか? ハードウェアとモデルの現実的な選び方【2026年春】
-
8
検図から積算まで支援する図面解析AI、工数を最大60%削減
-
9
Claude Opus 4.8は忖度(そんたく)しません “正直すぎる”のも善しあし?
-
10
AIがAIを作る時代の到来か──Anthropicが示す「再帰的自己改善」の実態とリスク
SpecialPR
ITmedia AI+ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmedia AI+をフォロー
あなたにおすすめの記事PR