ユニバーサル ミュージックは11月18日、「AIとの共生」を掲げた松任谷由実さんの新アルバム「Wormhole」を発売した。松任谷さんの40枚目のアルバムで、松任谷さんの声を学習したAI音声を活用した楽曲を収録する。Wormholeと連動した全国ツアー「THE WORMHOLE TOUR」も開催している。
Wormholeでは、AI技術を活用した歌声合成ソフト「Synthesizer V」を楽曲に導入した。「荒井由実」名義のものを含め、松任谷さんの数百のボーカルトラックをSynthesizer Vに学習させた。“別次元の荒井由実”の声を生み出したとしており、名義には「Yumi AraI」を使用している。
一方、作詞や作曲にはAIを使っていないという。松任谷さんは10月17日、Wormholeの完成を記念し、「109シネマズプレミアム新宿」(東京都新宿区)で開催したトークイベントに登壇。同アルバムの収録曲「岩礁のきらめき」で、試しにChatGPTに作らせた歌詞について「私風ではあるけれど、まったく新鮮味がない」と指摘。同アルバムにおけるAIとの線引きを以下のように述べた。
「特に日本語には行間があり、音律と一緒になったとき、その隙間に受け手が自分のリアルを重ねることができる。その情報量は膨大です。それをAIは学習できない。人の心を動かせるのは人でしかないと確信した」(松任谷さん)
Wormholeには、全12楽曲を収録した。価格は通常盤が3600円、インスト版のCDも付属する初回限定盤が7700円。アナログレコードやカセットテープなどが付属する「オールメディア盤」も完全生産限定で用意しており、価格は2万2000円。
また、THE WORMHOLE TOURも17日から開催中。2026年12月にかけ、全国で全72公演を開催する予定だ。
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