生成AIが台頭した2022年以降、AIコーディングが世界的に一般化している。ITエンジニアの転職支援を手掛けるファインディ(東京都品川区)の調べでは、国内ITエンジニアの7割超がAIツールを業務で活用中と回答。同社自身も積極的にAI生成コードを活用しているが、AIによって“生産性が低下する事例”も出てきたという。それは一体なぜか。
ファインディではコーディング支援AIツール「Devin」を導入し、開発生産性の向上に努めている。実際、同社のテックリードのプルリクエスト作成数(PR数)はDevin導入前で5.0件/日だったのが、導入後は7.7件/日になり、1.5倍以上増加。個人単位での結果が明確に示されたことから、AIによる開発生産性の向上に期待を込めていた。
しかし、組織単位では話が変わる。25年11月時点で、ファインディ全体のPR数を調べると、AI生成コードのマージ済みPR数の比率は増えていた一方、PR数全体はほぼ変動していなかった。開発者個人単位での生産性にはバラツキがあり、シニア層(30代半ば以降)では生産性が向上、若手層(20代前半)では逆に生産性が下がる傾向が見られた。
ファインディの山田裕一朗代表は「生成AIによる開発生産性の向上は当初、若手層のレベルを底上げするのではないかといわれていた」と話す。しかし現実は真逆となり、経験値を多く積み、高いスキルを持つシニア層が伸びた。この結果について山田代表は「AIに投げかける問いの設計」の重要性を痛感したと説明する。
「シニア層はAIを並列で動かしたり、ミーティング前の時間などをうまく利用して開発効率を高めている。一方、若手層はAIに投げかける問いが十分に整理されておらず、逆に手戻りが増える傾向があった。結果、若手層ではAIによって生産性は向上せず、逆に減少する現象が見られた」(山田代表)
このショッキングな結果を受け、ファインディ社内では若手層に対して、「情報処理技術者試験」などの国家試験を受験するように促しているという。業務上で求められるコンピュータサイエンスの基礎知識をきちんと持っていることの重要性がAIによって増していると山田代表は見解を示す。
一方で、日々猛スピードでAI技術の進化は続いている。山田代表は「(その流れから)降りたらもう戻れなくなる」とも警鐘を鳴らしており、若手層に対しては現状で開発生産性が落ちても、AIを使い続けることを奨励している。「それ(AI活用と基礎知識の習得)をやらなければ、現実的にITエンジニアを続けることは難しくなっていると思う」と指摘した。
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