第1に、小型モデルの進化だ。かつてAIモデルは「大きいほど(パラメータ数が多いほど)賢い」と考えられていた。しかし近年、パラメータ数を抑えながらも、特定タスクで大型モデルに匹敵する性能を持つモデルが続々と登場している。
米Microsoftの「Phi-3」や、米Googleの「Gemma」、米Metaの「Llama 3」、米IBMの「Granite」などが好例だ。小型モデルの性能向上と普及は、DSMにとって追い風になると考えられる。小型モデルは動かすのに必要な計算量や費用が小さく、反応も高速化できるため、特定業務に合わせて導入しても採算が合いやすいからだ。また社内PCや閉じた環境で動かしやすく、機密データを外に出しにくい領域でも使えるというメリットもある。
第2に、ファインチューニング技術の進化がある。企業が特定分野に特化した生成AIアプリを開発する場合、これまでは「モデルのチューニング(重みの最適化)」よりも「外部知識の接続」が主流だった。シリコンバレーの老舗ベンチャーキャピタル米Menlo Venturesの24年の調査によれば、企業内の生成AIアプリにRAGを採用する割合は51%に拡大(23年の調査では31%)した一方、ファインチューニングは9%だった。
しかしここ1〜2年間に、ファインチューニングは難しいという前提が崩れつつある。かつては膨大なデータと計算リソース、高度な専門知識が必要だったが、現在はAIモデルの一部だけを調整する「LoRA」などの効率的な手法や、直感的に操作できるツールの普及により、導入のハードルが劇的に下がっている。高品質の自社データが一定程度あれば、専門家でなくとも「自社専用AI」の構築が可能になりつつある。
第3に、既製品の充実だ。ここ1〜2年間で、法務・医療・金融などの分野では、あらかじめ調整されたDSMや、それを中核にした業務支援サービスを「買って使う」ことができる段階に入った。
例えば法務分野では、カナダのThomson Reutersが法務に特化したAIアシスタント「CoCounsel」を提供。法律関係のデータベース「Westlaw」に基づく調査・分析などをサポートする。法務サービスを手掛ける米LexisNexisも、法的文書の作成などを支援するAIサービス「Lexis+ AI」を提供している。
また医療分野では、医療系AI企業の米John Snow Labsが小型の医療用大規模言語モデル(Small Medical LLMs)を提供しており、臨床ノートの要約や医療知識を前提としたQ&Aなどに使える。
企業はゼロからモデルを構築する必要はない。既製ソリューションを導入し、自社データとの接続や権限設計、レビュー運用でカスタマイズできるため、AI人材が不足している組織でもDSM活用の道が開けつつある。
一方、業務側からもDSMに対するニーズが高まっている。背景にあるのは、汎用型のモデルを導入した企業が直面する「使えない」問題だ。汎用AIは業界固有の専門用語を正確に理解せず、社内の業務ルールも知らない。結果として「それらしいが実務では使えない回答」が返ってくる。この経験が、汎用AIへの失望を生み出している。
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