「住吉本人は忙しく、メッセージへの返信が来なかったり、返ってきても一言くらいだったりする。でもAI住吉さんは丁寧なやりとりで、壁打ち相手になってくれる。『AI○○』など実在の人物をモデルにしたAIサービスは、本人の分身を作ると考えられがちだが、AIだからこそ実現できる理想の姿を作ることが大切だ」(犬塚氏)
AIならではの短所をカバーする必要もある。例えば、AIが誤情報を出力する「ハルシネーション」対策の一環として、人事的な評価や個人に対する感情など、センシティブな質問には答えないよう調整する。本人の模倣はあくまで手段の1つであり、企業のユースケースを踏まえた実用性をより重視するわけだ。
そのためリーダーズAIは、顧客からの要望次第では、複数人の知見を組み合わせるなど、特定の1人をモデルにしない形式でも提供する。また、特定の1人をモデルにする場合にも、AIに反映する本人の情報と、企業・組織全体の情報を分けて管理する。仮に本人が異動したり退職したりしても、継続して利用できる仕組みという。
また「Microsoft Teams」や「Slack」など、企業内のチャットツール上でやりとりできる仕様にもこだわった。「従業員の視点からすると、会社が導入した新ツールのアカウントを作成したり、操作方法を学んだりするのはハードルが高い。日々使っているチャットツールのUI・UXに溶け込ませることが重要だ」(犬塚氏)
チャットツール上での展開には、使い方などを可視化するという利点もある。例えば、ディー・エヌ・エーでは、AIサービスの企画の社内公募にAI住吉さんを活用しており、100人近くのメンバーが参加するSlackの専用チャンネルでやりとりできる。自分以外のユーザーとAI住吉さんとの会話を見ることで、他人の活用法や準備が進んでいる企画を確認できる。
リーダーズAIを開発するきっかけは、THAが手掛けるAI社長の反響だ。AI社長はもともと、ディー・エヌ・エーに所属していた西山朝子氏(現THA代表)が副業で始めたサービスで、主に中小企業を対象とする。一方、大手企業からの引き合いにも対応するため、さまざまな法人向けAIサービスを展開するDeNA AI Linkとタッグを組んだ。
犬塚氏によると、大手企業では、米MicrosoftのチャットAI「Copilot」などの汎用的なAIサービスを導入したものの、回答の精度不足により活用が進まないケースがよくあるという。リーダーズAIは、THAがAI社長の開発で得た知見を生かし、実務で使えるAIサービスを目指す。
他方、一部の大手企業では、経営層を模したAIを内製する事例も出ている。キリンホールディングスは2025年8月、「AI役員」を開発し、経営戦略会議に本格導入すると発表した。三井住友フィナンシャルグループも同月、「AI-CEO」を開発し、三井住友銀行の業務で活用を始めたと発表している。
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