「部長、ちょっとお時間いただけますか?」――仕事でこのようなやりとりの経験があるビジネスパーソンは少なくないだろう。企業で働く場合、部下から上司への相談は基本的に避けて通れない。一方、時間的な制約などにより、相談そのものが業務を進める上でネックになることもある。
こうした課題に対し、ディー・エヌ・エーの子会社で、AIサービスを手掛けるDeNA AI Link(東京都渋谷区)は、“上司のAI化”という解決策を打ち出した。同社の企業向けAIサービス「リーダーズAI」では、経営層や管理職などの従業員を模したチャットAIを作成し、企業内のチャットツール上で提供する。部下の相談などに対応し、業務の効率化を図る。
一方で「モデルとなる人を、そのままAIに投影するわけではない」という。一体、どういうことなのか。リーダーズAIの開発方法や利用例、今後の展望などをDeNA AI Linkで同サービスを担当する犬塚佳樹氏に聞いた。
リーダーズAIは、社長を模したチャットAI「AI社長」を手掛けるTHA(東京都新宿区)と協力したもので、4月から本格展開する。ディー・エヌ・エーや既に契約が決まった一部の企業では、事前導入も進めている。
同サービスの開発では、企業の要望に応じ、モデルとなる人のふるまいや企業理念などをAIに落とし込んでいく。その特徴は、元から企業内にあるデータだけでなく、モデルとなる人にヒアリングした情報を組み合わせて活用する点だ。
例えば、営業部門のトップを模したリーダーズAIを作成する場合、モデルとなる人が「顧客との最初の商談で気を付けていること」など、資料化されていない情報を聞き出す。また、営業戦略の資料があるとしても「その戦略をどのように解釈し、具体的なケースでどう生かしているか」などの質問で深掘りしていく。
ヒアリングした情報を基に、モデルとなる人独自の価値観や判断基準に応じた出力をするようAIに事前に指示を出す。企業内にある資料を参照してAIが回答を生成する「RAG」や、やりとりの文脈に沿って回答する技術も組み合わせ、プロトタイプを作成する。その後、企業からのフィードバックによって回答を調整し、約3カ月で開発するという。
リーダーズAIの基盤には、米Googleのクラウドサービス「Google Cloud」を利用する。回答の生成には、Googleに加え、米OpenAIや米AnthropicのAIモデルを組み合わせており、開発・運用時のコストや性能に応じて切り替える。
一方、犬塚氏によると、リーダーズAIでは、モデルとなる人そっくりのAIを目指すわけではないという。モデルの人物にヒアリングまでするにもかかわらず、どういうことなのか。ディー・エヌ・エーに事前導入した「AI住吉さん」(同社のAI事業を統括し、DeNA AI Linkの代表も務める住吉政一郎氏をモデルにしたリーダーズAI)を例に、犬塚氏はその理由を語る。
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