VODが広く普及するためには、3つの条件のバランスをとる必要があると考えられる。その第1が、最初に述べたコンテンツである。超メジャーなコンテンツをいち早く、とまでは言わないが、インディーズのような映像ばかり揃えられても困る。有料配信であるが故に、お金を払っても見たいと思わせるコンテンツの質と量が重要だ。その点において、テレビ局のVOD進出は好材料となるだろう。
第2に、適切な料金体系であることだ。それは1本単価の問題もあるが、視聴期間が限定されるといったなんらかの制限があると、料金に見合ったサービスとは言い難い。つまり期間があるぐらいならば、レンタルビデオ屋で十分ことは足りるし、もっと言えば頻繁に再放送されるスカパー! でもいいわけである。VODの特徴である「いつでも」を捨ててしまえば、「放送のようなもの」になってしまう。
第3に、導入がわかりやすいことだ。例えばCATVやWOWOWなどは、街の電器屋に頼んでおけば、ある日おじさんがやってきておりゃおりゃと工事してくれて、書類にハンコをペンペンと押せば見られるようになる。届くのが電波か電線かの違いで、あとはテレビに向かってリモコン操作するだけである。
VODの対象となる顧客は、必ずしもIT戦士である必要はない。ネット回線など一度も引いたことがないおっちゃんが阪神戦を見るために契約するとして、果たして自力ですべての申し込みが可能だろうか。VODサービスはIPベースのソリューションではあるが、まずPCの接続が前提という考えを捨てることから始めなければならない。
次回は実際にVODサービスの契約と設置、視聴に至るまでのプロセスを体験して、VODの現実と未来を考えてみたい。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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