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コラム
» 2006年07月03日 08時30分 公開

【新連載】金融・経済コラム:株主総会は動画コンテンツになりうるか?

経済番組コメンテーターであり、M&Aアドバイザリーや財務コンサルティングを手がける保田隆明氏がIT業界を金融・経済面から語る新連載コラム第2回。株主総会のネット動画配信がテーマです。

[保田隆明,ITmedia]

 先日、立て続けに企業財務関連でGyaOの録画放送を見ました。1つは6月上旬に行われた村上ファンド代表村上氏による辞任(釈明)会見、もう1つは6月中旬に行われたライブドアの臨時株主総会の模様です。両方とも1時間〜2時間もあるものでしたが、ほぼ最初から最後まで通しで見ました。

 ただ、実際には「通しで見た」と言っても、同時並行でメールの返信を書いていたり、他のインターネットサイトを見たりしていましたので、ただひたすらその録画放送だけを見ていたわけではありませんでした。2つとも映像を見ずに、音声を聞いているだけでも十分に内容は把握できたので、気がつくとそういう「ながら」的な行為をしていたわけです。では、音声だけでよかったかというと、そうではなくて、これが音声配信のみのポッドキャスティングであった場合は、最初から最後までを聞くということは、いくら「ながら」的であってもできなかったと思います。

 もし、それらを家のテレビで見ていたならばどうだったかと考えてみると、果たして最初から最後まで1時間も2時間も通しで見たかどうかは疑問だな、と思いました。それは単に、記者会見や株主総会というあまり動きのないもの、音声主体のものをじっと家のソファに座ってテレビで見るというのは、なかなか忍耐力がいるからです。つまり、普段テレビで見る他の番組に比べると、やはりコンテンツそのものの魅力という意味では、記者会見や株主総会では、なかなか太刀打ちができないと思います。

 ただ、そういうコンテンツでも、同じ1つのパソコンの画面で録画放送を見ながらメールやネットの閲覧もする、いわゆる「ながら」行為の一環として見る分には十分に楽しめます。もちろん、テレビを見ながらパソコンでメールをやったりネットを見たりもできますので、原理的にはテレビで録画放送を見ていても「ながら」的な行為は取れるわけです。しかし、それはあくまでも理論上の話であって、実際にはテレビがついていたとしても、一度パソコンに目を落としだすと、テレビを見るにはパソコンから再度顔を上げてテレビを見るという行為、つまり、首振りが必要になります。一方で、1つのパソコンの画面の中で複数のものを見ている場合は、Alt+Tabキーを押せば瞬時に画面が切り替わり、頭を上げて、首を振ってという行為が必要なくなります。

 もし、記者会見、そして株主総会がネット配信はされずに、テレビでの放送だけがなされていた場合、私はおそらくそれらを最初から最後まで見ることはなかったと思います。ネット配信だからこそ、「ながら」的に見ることができたからこそ、記者会見や株主総会は楽しめました。それらは、まさにネット配信に適したコンテンツなんだと思います。おそらく他にもこういうように、テレビでの放送ではなくネット配信に適したコンテンツをいうものは存在するんだろうなと思います。

 そこで、ふと思ったのは、インターネットと放送の融合というものが叫ばれて久しいですが、ネット配信に適したコンテンツというものへの議論というのはあまりなされていないなと、ということです。最近のGyaOでの人気番組のランキングなどを見ていても、テレビでも放送されていそうな普通の番組が上位に来ていますが、単発でもいいのでもっとたくさんネット配信だからこそ楽しめるコンテンツが登場し、ネットで録画放送を見たことのない人たちが一度でいいので、ネットで動画を見るという行為を体験できるようになる、そんなあたりが今後の鍵なんじゃないかなと思ったりしました。

 先週は、企業の株主総会シーズン真っただ中でしたが、株主総会や企業の決算発表の模様を、少しはネットで楽しめるコンテンツとしてとらえられる企業というのがもう少し出てきてもいいような気がしました。まだまだ株主総会の模様などを配信しようと考える企業の人たちは少ないですからね。おそらく総会で紛糾した場合に、その模様が流れるのを皆さん恐れているのだと思いますが、それらも全て胸を張って公開できるぐらいの企業がガバナンスの観点からもいいような気がします。

 今回のライブドアの臨時株主総会の動画配信は、少しでも多くのご迷惑をおかけした株主の皆様に総会の模様をご覧いただけるように、という配慮があってのものだと思われますが、今後、他の企業が株主総会の模様をネット放送するというひとつのきっかけになっていくような気もします。「あの会社はネット配信をやっているのに、なぜおたくの会社はやらないんだ!?」と詰め寄られる前にやってしまったほうがいいのではないでしょうか?

保田隆明氏のプロフィール

リーマン・ブラザーズ証券、UBS証券にてM&Aアドバイザリー、資金調達案件を担当。2004年春にソーシャルネットワーキングサイト運営会社を起業。同事業譲渡後、ベンチャーキャピタル業に従事。2006年1月よりワクワク経済研究所LLP代表パートナー。現在は、テレビなど各種メディアで株式・経済・金融に関するコメンテーターとして活動。著書:『図解 株式市場とM&A』(翔泳社)、『恋する株式投資入門』(青春出版社)。ブログはhttp://wkwk.tv/chou/


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