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コラム
» 2007年02月26日 11時30分 公開

金融・経済コラム:やはり収益の多角化を図りたいネット業界

日経平均やTOPIXが6年ぶりや15年ぶりという高値水準に戻してきました。日銀の利上げもあり為替の動きが注目されていますが、国内のネット関連企業は内需型企業なので一見、為替の影響はなさそうですが……

[保田隆明,ITmedia]

 先週は日銀の利上げがありました。予想していたほど円高とならず、むしろ円安基調に振れたため、株価は上昇基調となり、金融ニュースで盛り上がった1週間でした。

 特に日経平均が2000年5月以来、6年9カ月ぶりに18000円台に乗せたと大騒ぎ。2000年5月と言えば、まだネットバブルが完全には弾ける前ですので、確かにその時期と同じレベルに日経平均が戻ったと聞けばなんとなく感慨深い気もします。

 補足ですが、日経平均とは東証一部に上場する代表的な225銘柄の単純平均株価(ダウ式平均)ですので、より正確に東証一部の全体的な動きを見ようとする場合は、TOPIXの方が的確です。こちらは東証一部の全銘柄の加重平均株価を取っています。そしてそのTOPIXも実は、1991年11月以来、15年3カ月ぶりに1800台に乗っています。1991年はバブル崩壊が始まっていましたが、それでもまだまだバブルの余韻が残っていたころです。確かに大騒ぎに値しそうな気もします。

 企業の2006年12月期決算、もしくは2007年3月期決算は、輸出型企業では想定以上の円安の恩恵を受けて大幅な利益押し上げ要因となるようです。円安が更に続けば輸出型企業の業績は安泰ということで、先週の株価が上昇という構図です。

 収益の大きな部分を輸出に依存する企業を外需型、逆に国内向けが多い企業を内需型と呼んだりしますが、やはり円安の時は外需型企業の株が買われる傾向にあります。一方、日本ではSI企業、インターネット企業のほとんどは内需型であり、海外での収益が非常に小さいところが多く、為替のインパクトはほとんど受けません。

 ただ、直接的な影響は受けないものの、通常、企業の広告出稿量は業績に連動することが多いので、それらエスタブリッシュ企業の業績が円安で良くなれば、ネット広告を主な収益源にしているインターネット企業にも円安の恩恵が間接的にめぐってきます。

 さて、ここ数年間、ネット広告のシェアが伸びているのは、ロングテール部分を現金化するという功績があったのは大きいわけですが、一方で業績好調な企業による広告出稿が順調だったことも見逃せません。企業がWeb2.0的サービスを手掛けるのも、基本的には広告収入を見込んでの場合が多いです。円安基調が続いている限りは、広告も順調でしょうが、円高になると輸出型企業は収益へのマイナスインパクトが発生し、広告出稿に対して消極的になると思われます。本来、内需型企業では為替は収益にあまり関係しませんが、ネット広告を主な収入源とすネット関連企業の場合は、円高のマイナス影響を間接的に被ることになります。また、広告収入を主とするWeb2.0サービスで上場を目指す企業にとっても痛い状況となります。

 エスタブリッシュ企業では、ここ数年間のリストラの成果により筋肉質な企業体となったことで100円台の円高になっても収益面ではカバーできるぐらいの企業も少なくありません。しかし、多くのネット企業ではネット広告はまだ拡大するだろうという前提で事業計画を立てている部分もあり、実は円高になると困るのは外需型企業ではなく、ネット企業だったりするのではないかと思ったりします。であれば、今の心地よい円安のうちに、広告以外の収入源の確保に向けて動き出すのは策として有効かと思われます。

 インターネット関連企業数は増加傾向にあり、ネット業界が1つの業界として成立しつつもありますが、一方で、収入における広告依存度は高く、その点、実はインターネット業界は広告業界の一部として捉えられても仕方のない面もあります。広告業界は完全な景気連動型業種であり、株価的にも面白みに欠け、広告会社もテレビ局も広告収入への依存度を低くしようと著作権やコンテンツビジネスに注力して来ているわけです(どこもまだ大きくは成功していませんが)。

 もちろんいくら企業の広告出稿ペースが低下しようが、まだまだネット広告は開拓の余地があるでしょうし、携帯端末向け広告のように比較的新しい分野での広告は引き続き増加が予想されます。ただ、円安、株高で世の中が浮き足立っているとどうしてもその次の悲観シナリオへの備えなどを考えてしまうのですが、最も考えないといけないのは一見為替からは縁遠いネット企業だったりするのかな、と思いました。

 その点、Googleのように主な収益源が広告であっても世界のさまざまな地域で収益を獲得している場合はやはり強いよな、と羨ましくも思います。実は、為替よりも景気よりも、アルファベット言語を使う企業がインターネット時代にはより有利だということもこの次には考えないといけないですね……

保田隆明氏のプロフィール

リーマン・ブラザーズ証券、UBS証券にてM&Aアドバイザリー、資金調達案件を担当。2004年春にソーシャルネットワーキングサイト運営会社を起業。同事業譲渡後、ベンチャーキャピタル業に従事。2006年1月よりワクワク経済研究所LLP代表パートナー。現在は、テレビなど各種メディアで株式・経済・金融に関するコメンテーターとして活動。著書:『図解 株式市場とM&A』(翔泳社)、『恋する株式投資入門』(青春出版社)、『投資事業組合とは何か』(共著:ダイヤモンド社)、『投資銀行青春白書』(ダイヤモンド社)、『OL涼子の株式ダイアリー―恋もストップ高!』(共著:幻冬舎)、『口コミ2.0〜正直マーケティングのすすめ〜』(共著:明日香出版社)。ブログはhttp://wkwk.tv/chou/


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