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ゲイツ会長、引き際のタイミングは?

» 2008年06月25日 13時00分 公開
[Eric Lundquist,eWEEK]
eWEEK

 わたしが想像するビル・ゲイツ氏の退職シーンはこんな感じだ――。ビルはタイムカードを手に5時ちょうどになるのを待っている。最後の給料を手にし、これからはマラリアと戦い、飢えた人々を養うことになる。そして、スティーブ(バルマーCEO)の失敗を後から批判することもやめるのだ。実際にはそんなシーンはあり得ないのだが、主にゲイツ氏とMicrosoftによってこの四十数年間で定義されてきたハイテク世界は、ビル・ゲイツ氏がいなければ、今とは違った世界になっていたことだろう。同氏はオタクの英雄として称賛され、ビジネス界からは野蛮人と批判され、OSの複雑さやソフトウェアコードの失敗が常に批判の対象となっていた。

 ビジネス史上、ことにハイテクビジネスの歴史上、ビルほど失敗したりタイミングを逃した人物はいない。それでも同氏は市場シェアと現金という企業にとっての2大目標を勝ち取った。覚えているだろうか。ビルはGUIが重要になることにも、電子メールが組織の伝達方法の主流になることにも、インターネットがものすごく重要になることにも、検索がコンピュータにおける標準的な入り口になることにも、気付くのが遅かった。普通の会社組織であれば、こうした大きなミスを犯したら即刻ビル清掃部門に左遷されるところだ。だが、自分がその会社を経営していて、独占的支配によって築いた現金の山の上に鎮座している場合は、大きなミスをしたとしても、それはそのまま大きな目標にされ、部隊に対する叱咤激励が飛ぶことになる。

 「わたしの主な仕事は指導することだ」と1988年の8月、ゲイツ氏は(わたしが編集者をしていた)Electric Businessの記事で、メアリー・ジョー・フォーリーに語った。この引用は恐らく、どんなコンサルタントの分析よりもゲイツ氏のビジネス哲学を明確に表している。同氏の「指導」には、製品開発報告会での激しい叱咤や深夜の電話や電子メール、顧客拡大やマーケティング計画死守のためにならいつでも飛行機に飛び乗ってどこへでも行く覚悟をマネジャーに求めることが含まれている。わたしはゲイツ氏が議論で負けたところを見たことがないが、ラスベガスのスペンサー・キャットのパーティーで、当時のPC WEEKの技術アナリスト、ピーター・コーフィーとこう着状態になったのは見た。2人はたしか、Visual Basic関連のことがきっかけの議論をしていて、話はすぐに人間には理解しかねる話に発展した。

 ゲイツ氏は自分自身にとって適切な時期に、そして同氏のような知識層にとって適切と思える使命(世界を救う)をもって、Microsoftを去ろうとしている。今のところ、ハイテク業界にはゲイツ氏を超えるだけの意志と目的意識と能力を持つ人物は見あたらない(Googleの3人は別だと思うが、3人そろえばの話だ)。ゲイツ氏が行ったことのほとんどは指導することだったが、それは企業でも国家でも軍隊でもリーダーが常に行わなければならないことだ。

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