なぜ「優先度が“低い”タスク」から片づけるべきなのかあなたの不安、見積もります

どんなに重要なタスクであっても、どうしても取りかかる気が起こらないときというのがあります。そんなときには優先度が“低い”タスクから取りかかるのが効果的。その理由を心理学の視点から説明します。

» 2009年06月04日 10時00分 公開
[佐々木正悟,Business Media 誠]

ビジネスパーソンの不安ポイント

 GTDなどではよく、「タスクの優先順位をつけること」の重要性が説かれていますが、最重要のタスクでも、取りかかりにくい状況や気持ちの時もあると思います。しかし、そういう仕事を後回しにすると、気になって他のことが手につかなかったりします。どうしたらいいでしょう?


 この問題に対する対処法として、次のようなやり方が考えられます。

  1. その日のうちにやるべきことを「重要なこと」も含めてすべて書き出す
  2. 優先順位の低い方から片付ける

 まずは1のステップですが、ここに書くことは、あくまでも「その日のうちにやるべきこと」だけです。翌日以降にやってもいいことは書かないようにしましょう。

 そして2が肝心ですが、最初に「最重要のこと」が手につかないのであれば、それからやろうとしても時間の無駄です。むしろ、「その日のうちにやるべきだが、それほど重要でもないこと」をまず片付けていきましょう。いずれにしても、その日のうちにやらなければならない仕事なのですから。

心理学:不安を「ほどよくやる気のある状態」にもっていく


 これは「ヤーキーズ=ドッドソンの法則」という、心理学では有名な法則を図示したものです。人は、無気力ではもちろん最高のパフォーマンスを発揮できないが、緊張しすぎていてもダメで、最適な心の緊張状態というものがある、という法則です。

 スポーツなどでは誰もが経験したことがあることでしょうが、これを仕事に応用すると、「最重要の仕事を今日中に片付けなければいけない!」というとき、人は緊張しすぎているのです。だからうまくいかないのです。

 そこで、どちらかと言えば重要でないことをどんどん片付けることで、心理的には緊張感が弱くなります。それは、仕事が片付くことでリラックスできるからということと、簡単な仕事を行ううちに、それなりにエネルギーが発散されて、よけいな力がそぎ落とされるからです。

 そうして「ほどよい緊張状態」に入ったら、「重要な仕事」に取りかかるとよいでしょう。

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筆者:佐々木正悟

 心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』、『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。


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