仕事の効率を上げても解決しない理由――部下を“モノのように”見ている人たち君はパラダイム転換を体験したか――『7つの習慣』より

正しい原則に沿って充実した生活を送っている人や、繁盛している家族あるいは成功している組織を見ると、人は驚き、そして強い関心を示す。次に「どうやればいいのですか。コツを教えてくれませんか」と聞く。しかし、効率を上げることが、問題の根本的な解決になるのだろうか。

» 2009年08月31日 13時30分 公開
[スティーブン・R・コヴィー(訳:ジェームス・スキナー、川西茂),フランクリン・コヴィー・ジャパン]

苦境の時代にこそ原則(プリンシプル)の力

 パラダイム転換――。インターネットなどの情報技術に発展により、時代の流れが速くなったと言われる現代。折しも、昨年秋ごろの世界的な金融危機にその流れはさらに加速しています。経済的な苦境を脱するため、ありとあらゆる戦略や戦術が語られてきました。しかし、この未曾有の時代に本当に必要なものとはなんでしょうか? 市場環境や状況がいかに変化しようと、変わることのない、原則・プリンシプルではないでしょうか。絶えず変化し続ける世界に対し、自分自身の中で原則を貫くことが苦境を乗り切る力になるのです。「7つの習慣」と「第8の習慣」は、原則に生きるための確実な羅針盤として、あなたを応援します。


『7つの習慣』(インサイド・アウト)より

 正しい原則に沿って充実した生活を送っている人や、繁栄している家族あるいは成功している組織を見ると、人は驚き、そして強い関心を示す。成熟した人格を持つ個人、一致協力している家族、事業環境の変化にすばやく柔軟に対応できる組織文化に、敬服するのだ。

 そして、次には「どうやればいいのですか。コツを教えてくれませんか」と聞く。そうした質問をする人の基本的なパラダイムが、そこからうかがい知ることができる。本当に聞きたいのは「私の問題を一刻も早く解決してくれるような、手っ取り早い応急処置的な解決方法、アドバイスを与えてください」ということである。

 そうした質問に答えてくれる人は簡単に見つかるだろう。そして、短期間においては、とりあえず教えてもらった解決方法やスキルあるいはテクニックも効き目があるように見えるだろう。鎮痛剤やバンドエイドのように、急性の痛みをしばらくの間は和らげてくれる。しかし、表面下にある慢性的な問題はそのままであり、すぐに別の新しい急性の症状が表れてくる。急性の問題や痛みに対して応急処置ばかりを続けていれば、やがてはその対応策自体が表面下に隠れている慢性的な問題をかえって悪化させる結果になる。

 つまり、問題の見方が問題なのだ。

 この章(※)の冒頭で紹介した課題と個性主義的な考え方の関係について、改めて考えてみることにしよう。

※詳しくは書籍『7つの習慣』をご覧ください。

 「今まで私は何回もマネジメントやコミュニケーション・スキルの研修を受けてきた。部下に対して大いに期待しているし、私自身も日頃から親切で良い上司になろうと努力している。しかし、部下の忠誠心が全く感じられない。もし私が病気で休みでもしたら皆がサボるのではないか、と心配でならない。彼らに自主性と責任感を持たせる、あるいはそういうものを持っている従業員を見つけることがどうしてできないのだろうか」

 個性主義の教えによれば、大胆な行動を起こし――部下を脅すなどして――態度を改めさせたり、部下の決意をさらに深めるために、新しいモラル向上やチームワークの研修を導入したり、あるいは、もっと仕事ができる人を新規採用すべきだということになる。

 しかし、部下がこちらの真意を疑っているということはないだろうか。また、こちらも、彼らのことを念頭におかずに行動し、彼らを物のように扱っているということはないだろうか。心の奥底では、彼らを物や道具のように“見ている”ということはないだろうか。部下に対する見方そのものが問題をつくり出してはいまいか。

 「やらなくていはいけないことが山ほどたまっている。いつも時間が足りない。毎日毎日、朝から晩まで追われっぱなしだ。時間管理のセミナーに参加してみたし、いくつものシステム手帳を使ってもみた。しかし、それでもまだ自分が思うような充実したバランスの取れた生活はできていない」

 個性主義の教えによれば、何か新しい手帳やらセミナーやらによってもっと効率良く行動し、こうしたプレッシャーを緩和させる方法があるはずだという。

 しかし、効率を上げることが、本当に問題の根本的な解決になるのだろうか。より少ない時間でより多くのことを成し遂げるだけで、本当に生活が良くなるのだろうか。もしかすると効率を上げることによって、今自分の人生をコントロールしている状況や人に反応する速度が早まるだけではないか。もっと深く根本的に見なければならないことはないだろうか。時間、人生、自分自身についてのパラダイムがこの問題をつくり出しているということはないだろうか。


 さらに詳しい内容を知りたいという方は、書籍『7つの習慣』をご覧ください。次回は、自由を手に入れるための「習慣の引力」についてご紹介します。


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