世界的エンタテイナー、マイケル・ジャクソン。ダンスや歌もさることながら、彼のステージの魅力というのは、観客を熱狂させる「間」にありました。これはビジネスパーソンのプレゼンやスピーチにも利用できるテクニックなのです。
トークのテクニックとして重要なものの1つに「間」の取り方があります。この間をきちんと取ることができると、聞き手の心をしっかりつかむことができます。今回は、その間の取り方を世界的エンタテイナーから学んでみましょう。
世界中に衝撃が走った、マイケル・ジャクソンの急逝から早数カ月。彼が死に際まで取り組んでいたロンドン公演のリハーサル映像が、ドキュメンタリー映画「THIS IS IT」として、先日全世界同時ロードショーとなりました。上映期間が2週間しかないということで、私もさっそく見に行きましたが、やはり世界的エンタテイナーのすごさに圧倒されました。
とにかく、すごいところ、素晴らしいところはたくさんあるのですが、特に私が注目したのは、マイケルの「間」へのこだわりでした。歌い出しのきっかけ、曲中での「間」の時間、エンディングの終わり際など、とにかく、1つ1つの「間」に対して、徹底的にこだわるんです。
「ここはぼくがきっかけを出すからそれを合図に」
といった感じで、とにかく観客を惹きつけるための「間」を非常に重要視していました。
彼が重視していた「間」、その究極とも言えるものが、少々時間をさかのぼりますが、1992年にルーマニアのブカレストで行われた「デンジャラス・ツアー」のオープニング。このとき、マイケルは、オープニングでステージに登場してから、なんと1分39秒、立ったまま微動だにしませんでした。
そこから首だけ舞台下手に振って7秒。さらにたっぷり11秒も時間をかけてサングラスを取り、その直後、ターンを決めて一曲目の「Jam」を歌い始めたのは、ステージ登場から2分も経ってからのことでした。
この間によって観客は大興奮状態に。歌いだす前から何人も失神者が続出し、スタッフに運び出されていました。
これを見ると、彼のステージの魅力というのは、ダンスや歌もさることながら、この観客を熱狂させる「間」にあったということが分かります。そして、マイケルはその重要性を十二分に理解していたのだと、映画を見ていて思い知らされたのでありました。
研修やセミナーなどでスピーチなどのやり方を教え、その際に「間」の取り方の重要性をお話しすると、よく受講生から、
何秒くらい「間」を取れば良いのですか。
と質問されます。しかし、この質問はとても答えにくいものなんですよね。その理由を説明する前に、そもそも、なぜ「間」を取る必要があるのかを考えてみましょう。
「間」を取る理由については、いろいろな意見があると思いますが、私自身は、
に取るものだと考えています。
「次にこの人は何を言うのだろう」
と言う気持ちにさせ、その言葉を聞きたいと思わせる気持ちをぎりぎりまで高めさせること。これが、トークにおいての「間」の役割なんですよね。
そういう意味で考えると、「間」の秒数よりももっと重要なことは、
ということなんです。だから、間を取ることが苦手だという人は、間の秒数よりも、こちらをきちんと意識しましょう。
講師業の人ならともかく、ごく普通のビジネスパーソンならば、プレゼンやスピーチなどで人前で話す時間は、せいぜい5分程度、長くても10分くらいですよね。それくらいの時間ならば、きちんと「間」を取るのは1回だけに制限しておきましょう。その代わり、たった1回の「間」を効果的に使うのです。
では、どこでその間を取ればいいか。それは、
です。そのためにも、スピーチの全体を考え、一番相手に伝えたいことは何かを1つだけ選び出して欲しいのです。
じっくり考え抜いた、たった1つの伝えたいこと。これをきちんと選び抜いた上で、それを伝える直前に「間」をしっかり取る。そうすれば、あなたの話は聞き手の心に届き、あなたの話は、聞き手の気持ちを惹きつけることでしょう。
マイケルも、観客を惹きつけ、自分の音楽に観客を引き込むために、どのタイミングで「間」を取ればいいかを考え抜いていました。
私たちは彼のようなエンタテイナーではありませんが、ぜひ彼にならって、聞き手を自分の話に引き込み、効果的に自分のメッセージを相手に伝えたいものです。そのために、たった1回だけ使える「間」をどこで取ればいいか、考え抜いてみて下さいね。
マイルストーン代表取締役。「社会に活き活きと働く大人たちを生み出す」をスローガンに掲げ、リーダーシップやモチベーション創造、自己表現力養成をテーマにした企業研修や公開セミナーを実施。また研修・セミナー講師向けに、具体的な成果を生み出す効果的なカリキュラムの構築手法や講師としてのマインド、人間力創りの指導も行っている。現在、日刊(平日)で、メールマガジン「1回3分でレベルアップ! 相手の心を掴むトーク術」を発行中。
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